演習林の研究
演習林の研究活動は、主に森林科学に関連する分野を基盤として行われています。研究テーマとする自然現象や社会現象の違いに基づき森林圏生態学研究室・森林生物機能学研究室・森林圏生態社会学研究室・森林流域管理学研究室の4つの研究室があり、それぞれの教員が研究テーマに沿って配属されています。
また、各地方演習林では、その地域の自然・環境・歴史に基づき、ユニークでダイナミックな実験的・試行的研究を実施しています。持続的な森林施業法の開発や森林機能究明のための試験林、森林生態系の長期モニタリングなど森林に関わる貴重なデータを収集し、森林科学の発展に貢献しています。
地方演習林
日本で最初に設置された演習林。創立以前(江戸時代)からの超高齢林を含むスギ・ヒノキ人工林と、常緑広葉樹が優占する生物多様性の高い天然林を有している。成長の長期測定や針広混交化実験などの人工林研究、暖温帯林生態系の保全・管理、マツ材線虫抵抗性マツの選抜増殖などに関する研究を展開している。
常緑針葉樹と落葉広葉樹が混交する広大な北方の天然林を舞台に,環境保全と資源利用の両立を目指した森林生態系の持続的・順応的管理手法について,生態系の理解を基軸として研究を行っている。
標高差が大きく、山地帯から亜高山帯にいたる幅広い森林植生を有している。大面積長期生態系プロットや落葉広葉樹林における動植物の動態など森林生態系に関する研究を多く行っている。
各種試験林を始めとする樹林の他に、苗畑、温室、生物実験室などの実験施設を備えており、フィールドと実験室が一体となった研究環境を有している。都市森林学に関する研究、樹木生理に関する研究などを行っている。
生態水文学研究所がもともと荒廃した山地に設置され、緑化により植生が回復した経緯から、森林植生と水源涵養機能、土砂流出との関係を中心とした森林水文に関する研究が行われている。そのほか、環境保全機能に配慮した森林施業法などの試験研究が行われている。
山中湖畔のリゾート地という立地を生かし、森林の景観評価やレクリエーション機能、森林教育プログラムの開発など、人と森林とのつながりを中心に研究している。
温泉熱を利用した加納温室では、カカオ、バニラなどの熱帯・亜熱帯産植物の増殖と利用に関する研究を行っている。青野研究林では、早生樹ユーカリの造林試験および成木の材質・利用に関する研究、クスノキ、アブラギリなどの特用樹木の管理と利用に関する研究を行っている。
研究室
森林生物の個体、集団レベルの生命現象を主な研究対象とします。森林に生活する生物種の生活史、個体群動態、群集構造、種間関係、生物間相互作用などを広大な演習林のフィールドを駆使して探求し、その結果から生物多様性の維持、野生生物の適切な管理など個別技術を提案するとともに、森林生態系全体の持続的維持のために必要な、生態学的管理の具体的手法とその評価手法を構築します。
森林生物の生命現象を研究対象とし、生物機能面からその探求を行います。多様なフィールド環境において、様々な生物的・非生物的要因に対して発現する生物機能を、個体、器官、組織、細胞、遺伝子、分子といった様々なレベルで解析しメカニズムを明らかにするとともに、森林の保護、再生、持続的管理、利用等に活用することを目標としています。このために、樹木と微生物、特に病原菌との相互作用、樹木の環境ストレス耐性、森林遺伝子資源の利活用等の課題に取り組んでいます。
森林生態系から人間社会までを一つの系として捉え、社会に資する森林を維持・管理していくために必要な情報を実際のフィールドから収集し分析します。森林内での情報の収集や情報伝達に関わる技術の開発を行うだけでなく、社会制度への応用や経済的効果についても検討し、総合的に森林生態系と人間社会との関わりを探求します。
森林資源の持続的な管理、森林における水循環、森林・水・人間の関係を主な研究対象としています。利用可能な森林資源・水資源の量や利用状況の変化を明らかにし、森林資源・ 水資源・陸域生態系を調和的に管理・育成・保全する手法の確立と社会実装を目指しています。