研究

北海道演習林

研究の概要

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上の写真は、1957年から46年間に5回の単木択伐を実施した択伐林分(51林班)、同林分の蓄積の推移は、下図の天然林施業試験地(P5137)参照。

①林分施業法のシステム化
生物多様性の維持や森林生態系の保全に配慮し、林分施業法に基づく天然林施業の実験を行っています。樹種特性の解明、森林構造と成長量の解析、天然更新技術の開発を進めて、最適施業法の確立と天然林管理のシステム化を目標とする研究を行っています。

②人工林育成技術と施業法
トドマツ、アカエゾマツ、エゾマツなど様々な北方樹種について,密度管理を主体とした育林体系の確立を図っています。道内でも希少なエゾマツの造林地では、基礎的なデータの収集を行っています。近年では、疎植にして下刈りを省力化する試験を行うとともに、造林地に侵入定着した広葉樹を育成し、早期に混交林に誘導させる技術を開発しています。

③北方系森林遺伝子資源の保全管理と利用
北方系森林遺伝子資源の収集と保存、生態遺伝、カラマツ属の交雑育種など、林木育種に関する研究を行っています。天然林では、DNAマーカーを用いてトドマツ、ウダイカンバ、ヤチダモなど主要樹木の遺伝的構造や遺伝子流動に関する研究を行っています。

④高密度路網
林分施業法のもとで林道開設が進行し、現在の総延長は933km(林道密度41m/ha)に達しました。効率的な林道維持技術の向上は重要な課題です。林道は森林構造からみれば連続したギャップであり、森林生態的機能の面からの調査・研究を行っています。

⑤直営生産
天然林択伐生産におけるきめ細かな作業方法の確立、木材市場に対応した資源の収穫、高性能林業機械の導入試験、森林作業技術の継承と開発など、重要な課題を担っています。

⑥GISデータベースの構築
長期的かつ大面積にわたって記録・蓄積された森林情報を総合的に管理・活用するため、GIS(地理情報システム)を用いたデータベース化を進めています。

⑦森林保護
エゾマツのヤツバキクイムシによる虫害、暗色雪腐病などの病害の研究、近年ではエゾシカによる樹木や農作物への被害について調査・研究を行っています。

⑧風害跡地における森林再生過程の解明
1981年の台風15号によって大規模な撹乱を受けた森林の再生過程を明らかにするために、被害林分の構造や植生の動向、遷移の過程、病虫害の発生状況に関する調査を進めています。

⑨水系総合基礎調査
亜寒帯域における流出特性と風害地の植生回復に伴う流出の長期的変化を解明するため、水文観測を行っています。2004年からは、水質、水温、水量、水生動物、植生、土壌、地質の各分野の研究者・学生が合同で、河川源流部を踏査し、総合的な調査を行っています。

⑩石灰岩地帯生態系総合調査
天然林における更新問題や鉱山跡の緑化に資することを目的に、演習林内の蛇紋岩地帯や石灰岩地帯における森林植生の調査・研究を行っています。

⑪長期観測に基づく森林生態系の動態解明
前山保存林に36ha、岩魚沢流域に19haの大面積長期生態系プロットを設け、各樹種の成長や自然撹乱など、森林生態系の長期モニタリングを行っています。

⑫ミズナラ優良大径材の持続的生産システム開発
天然林内のミズナラ大径木約26,000本の個体情報の収集管理と持続的生産計画、広葉樹再生林のミズナラ林分の間伐、風害地での植栽、天然更新と保育を統合した「ミズナラ作業級」を創設し、ミズナラ優良木生産のシステム開発を進めています。


 

広大な施業実験林における研究-原生林から天然林へ

北海道演習林の森林は、1899年の創設当時は原生林といえる状態でした。長い期間自然のままにおかれた原生林では、成長が旺盛な樹木がある一方で、枯れ木や倒木がどんどん生じてきます。炭素の蓄積という観点から見れば、光合成による成長量(蓄積量)と腐敗による分解量が拮抗する一種の動的平衡状態(極相)に達し、木材生産という観点から見れば眠ったような状態となります。

北海道演習林では創設以降、原生林において生命力の衰退しつつある木や形質不良な木の整理伐採を行い、育てるべき木を残す、という施業を行ってきました(模式図参照)。

1938年からは森林の成長量に見合う収穫を持続的に行えるようになり、木材生産装置としての森林が目覚めました。例えてみれば、タンス預金を銀行に移し、元本を維持したままで利息分だけを定期的に引き出すという方式が適用できる森林へと転換・改良してきたのです。1958年から現在に至るまで、この方式を精緻化し、旧御料林で行われていた「天然林施業」を継承し発展させた「林分施業法」を行っています。林分施業法では、森林の状態に応じた集約的な施業を行うという観点から、現状の森林を択伐林分、補植林分、皆伐林分に区分します。

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蓄積の推移-二つの天然林試験地P5137(施業林)およびP5146(保存林)の例-
この図は択伐林分に設けられた天然林施業試験地(P5137)の蓄積の推移を示したものです。対照として森林施業を行っていない保存林内の天然林施業試験地(P5146)の蓄積の推移を併記しました。原生林の状態に近いP5146では、成長量と枯損量がほぼ平衡しているため、蓄積の変化があまり見られません。それに対し、P5137では1969年から2003年までの35年間に3回の単木択伐を行いました(試験地が設定される以前にも2回の単木択伐が実施されています)。その間に、1969年には301m3/haだった蓄積が、2003年には371m3/haまで増加しました。また、この35年間の総伐採量は140m3/ha、台風被害(風害後に発生した虫害木を含む)37m3/haと枯損量25m3/haを合わせた粗生産量は202m3/haに上ります。森林施業を行うことで、高い生産性が維持されている天然林の例です。* 台風被害で測定が出来なかったため推定値を代入