【研究紹介】天然林の長期観測大面積プロットによる林分動態の解明

秩父演習林 教授 梶 幹男

天然林では樹木の生育分布が均一でなく、わずかな立地条件の差の影響を受けやすいので、その動態を把握するためには十分な個体数と現存量のある箇所で大面積プロットによる継続調査が必要となる。また、樹木の寿命は非常に長く、環境変化に対する反応速度が遅いため長期的な継続調査によって個体の成長、枯死、更新の状況を把握することが不可欠である。これらについての良質な情報は大面積プロットにおける長期観測でしか得られない。

北海道演習林では前山保存林に1992~1993年に約40ha、岩魚沢保存林に約20haの大面積プロットを設置し、個体ごとの成長、進界・枯死木の記録測定を5年ないし10年毎に行うことで森林の動態についての長期モニタリングを実施している。また、秩父演習林のイヌブナ-ブナ優占林においても同様の長期モニタリングを実施している。

このような研究によって同一場所における森林動態に関する長期間に亘る詳細な基礎的資料が得られるばかりでなく、それらのデータを種々の観点から解析することによって、例えば地球温暖化に伴う森林の組成・構造に与える影響、天然林択抜施業における人為的影響等の評価を客観的かつ的確に行うことが可能になる。また、観測によって得られた資料を実習等に活用することによって、教育面に資するところも大きい。

 

2006年4月1日