【研究紹介】植物組織培養による薬用・香辛料樹木の品種改良

樹芸研究所 助手 高上馬 希重

2005年6月6日

 私たちの研究所では薬用,香辛料になる樹木を研究対象の一つにしています.これら樹木たちはそれぞれ様々な化学物質を作り出し人々の役に立っています.

 ビャクダン(白檀,Santalum album)は東南アジアなどに産する樹木で,その心材は高価な香料や香木となりスパイスや薬用にも利用されています.心材にサンタロールなど多くの精油成分が含まれています.心材製品を得るには樹木を切り倒す必要がありますが,その成長には多くの年月を要するため再生は容易ではありません.また乱獲による資源枯渇も憂慮されているのが現状です.

 このような問題を克服するため私たちは,植物体内の有用成分の合成経路や植物成長ホルモンの合成経路を改良して「有用成分の含有量が高い」,「成長が早い」ビャクダンの新しい品種を作り出す研究に取り組んでいます.

 これまでに私たちはビャクダンの人工の種子(不定胚)を植物組織培養技術によって作り出すことができるようになっており,均質なクローンを得ることが可能になりました.そこで基礎研究の非常に進んだ実験植物シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)などで明らかになりつつある技術を応用して,人々の生活をより豊かにする新たな樹木の開発を目指しています.