【研究紹介】千葉演習林における皆伐更新適地の選定

広嶋 卓也(森林流域管理学研究室/千葉演習林 講師)
2008年6月1日

研究内容


 千葉演習林では森林情報を効率的に管理するために,GIS<注>データの整備をすすめてきました。これまでに整備の完了したデータは以下の通りです:航空写真(15cm解像度,正射化),標高データ(10m×10m単位),林相図(森林簿を含む),林道(災害・補修履歴を含む),歩道,河川<1>。その他,地質図,1/2,500地形図,試験地などのデータを整備中です。

 これらデータに対し,GISソフトの検索機能や地形解析機能を適用して,森林管理に役立つ情報を得ることができます。検索機能により,たとえば, 20~40年生の人工林を林相図上にハイライト表示して間伐対象となる林分の数や位置を把握したり,河川から50m以内にある天然林を抽出して渓畔林として保護すべき林分を把握したりすることができます。また,地形解析機能により,標高図から斜面傾斜角,斜面方位を計算して造林適地を検討したり,土場と伐採地をむすぶ直線に沿った地形の縦断面図を表示して索張りを検討したりすることができます。

 こうしたGISの機能を組み合わせて,皆伐更新の適地を選定する手順を紹介します。適地の条件は,林齢80年以上で,林道から近く,傾斜が緩い人工林とします。まず,80年以上の人工林小班を抽出したうえで,林齢を10等分し,10点満点で高齢ほど高得点を与えた主題図を作成します。つぎに,林道から500mの領域を図示したうえで,50m間隔で10等分し,10点満点で道に近いほど高得点を与えた主題図を作成します。さらに,斜面傾斜角を10等分し,10点満点で緩傾斜ほど高得点を与えた主題図を作成します。最後にこれら3つの主題図を適当に重み付けして合成します。ここでは仮に,林齢:距離:傾斜=1:6:3とします。こうして,皆伐更新の適地を10点満点で評価した主題図が完成します。各得点に属する林地面積を調べ,最終的に7点以上の林地を適地として選定しました<2>際には合成の際の重み付けを変更したいくつかの図を作成・比較して,さらに現地を視察した後に,皆伐更新地を決定します。

<注> GIS(Geographic Information System地理情報システム):図面として表される位置情報と,帳簿・帳票として表される文字・数値情報を同時に扱うシステム

 

図表


2008060101.jpg
<1> 標高データを3次元表示し,航空写真,林相図,林道,歩道,河川を重ね合わせた図

2008060102.jpg
<2> 皆伐更新適地の一例。ピンク色が濃い場所ほど評点が高い

参考文献


[1] 伊藤真一(2003)施業方法によるスギ人工林のゾーニング.新潟大学卒業論文

[2] 木平勇吉・西川匡英・田中和博・龍原哲(1998)森林GIS入門-これからの森林管理のために-.日林協,東京

[3] 鄭躍軍・南雲秀次郎(1994)GISを利用した森林機能による類型区分.日林誌76:522-530.