【研究紹介】台風被害地における更新促進施業が炭素の貯留と排出に及ぼす効果は?
尾張 敏章(森林流域管理学研究室/北海道演習林 講師) |
研究内容 |
台風による大規模な自然撹乱は、森林に蓄積された炭素の量を顕著に減らす原因となります。台風の被害地において、植栽や地がき(地表処理)といった施業を適切に行えば、森林の更新が促され、回復に要する時間を短縮できるでしょう。一方、施業の実行は化石燃料の消費による炭素の排出を伴います。本研究では、台風被害地において植栽・地がき処理(写真1)が行われた後、25年が経過した試験地を対象に、貯留・排出された炭素量を調査しました。 樹木と下層植生(ササ)に貯留された炭素量を比較した結果、植栽樹種ではグイマツ雑種F1が、地がき深では0 cm(表層植生のみ除去)が、それぞれ森林の炭素貯留機能を早期に回復させる上で最も効果的であると考えられました(図1)。また、施業実行に伴う炭素排出量は、森林の炭素貯留量に比べてごくわずかであることがわかりました。 |
図表 |
発表文献 |
Owari, T., Kamata, N., Tange, T. and Shimomura, A. (2011) Effects of silviculture treatments in a hurricane-damaged forest on carbon storage and emissions in central Hokkaido, Japan, Journal of Forestry Research 22(1), 13−20, DOI: 10.1007/s11676-011-0118-3 |