富士癒しの森研究所概要

1.沿革
 (1)歴史
 (2)歴代林長
 (3)鳥瞰図

2.地況
 (1)地実況と気候及び気象
 (2)富士演習林気象データ

3.林況
 (1)林況
 (2)林相別面積
 (3)道路延長と道路密度
 (4)樹木園の主要樹木

1.沿革

(1)富士癒しの森研究所(富士演習林)の歴史

富士癒しの森研究所の沿革を表-1の略年表に示しますのでご覧下さい。本研究所の前身である富士演習林は、浅間神社及び山中湖村村 民多数の協力により、その所有地 約12.3haの譲与を受け、大正14(1925)年11月に設立されました。翌大正15(1926)年には、県有地約33.4ha を借入し現在の基本形態が確立され、演習林事務所及び苗畑も同年8月に完成しました。昭和10(1935)年には、高山植物 見本園及び高山植物管理舎が建設されましたが、植物園は現存しておりません。この後、昭和20年代後半には苗畑の整備が行われ、演習 林内で必要な苗木の自給が可能になりました。また。昭和25(1950)年頃には、・林班下部と・林班の一部にかけて樹木園が整備さ れました。平成3(1991)年12月には、・林班1小班に管理棟(72平方m)が新築されました。平成23(2011)年、第4期 教育研究計画の実施を機に、「富士癒しの森研究所」へと改称しました。

森林の整備及び試験研究関係では、まず、昭和2〜10(1927〜1935)年にかけて、・林班を中心に約5haのカラマツの造林 が行われました。また、昭和4(1929)年には、・林班の大正2〜3(1913〜1914)年植栽のカラマツの造林地を対象に成長 測定地を設定し、継続調査が開始されました。昭和30(1955)年には、・林班上部に山梨県林業試験場との共同研究による寒地性樹 種育林試験地が設定され、富士演習林における造林関連試験地の中心として、今日まで継続的に研究が行われています。以後数年間にわた り、落葉広葉樹成長試験地、カラマツ系統別試験地、ヤチダモ植栽試験地などが相次いで設定されました。また、ヒノキ・スギなどの耐寒 試験やモミ属樹種のカラマツ林下の樹下植栽試験などが、昭和50(1975)年ごろまで行われていました。昭和57(1982)年に は第1期試験研究計画が実施に移され、森林風致計画学関連の課題として、森林の保健休養機能に関する研究、また、造林関連の課題とし て、寒地性樹種育林試験が実行されました。これらの課題を引き継ぎ、平成4(1992)年には第2期試験研究計画、平成 14(2002)年には第3期試験研究計画が実施されました。第3期計画の後半には、より一層の個性化・活性化を目指して「富士演習 林マスタープラン」が作成され、この中で「Base FACE (Forest space for Amenity, Communicational and Educational use)」として、富士演習林が目指すべき新しい保健休養林のあり方を掲げました。このBase FACE実現に向けた活動に基づき、平成23(2011)年より実施されている第4期教育研究計画では、地域社会として保健休養林を実現する仕組みを実現 する時期にあると位置付けています。この中で、保健休養林の社会的実現のための実践的なアプローチとして、実証林を用いた試験研究 や、地域住民協働イベントなどが行われ始めています。

富士癒しの森研究所(富士演習林)略年表
大正14年(1925) 11月 浅間神社社有地および高村靖氏ほか144名の個人所有地の寄付申込を受ける
大正14年(1925) 11月 富士演習林設立
大正15年(1926) 8月 演習林事務所と苗畑6ヶ所完成
大正15年(19256) 12月 村民の好意と理解により部分林分収入権放棄。山梨県より県有地の貸与を受ける
昭和2年(1927)  -昭和10年(1935)
III林班にカラマツの植林
昭和4年(1929)   III林班にカラマツ生長測定地を設定
昭和10年(1935) 3月 高山植物見本園と薬草園設置計画がたてられる

8-11月 高山植物園と高山植物管理舎の建設
昭和10年(1935)頃   樹木園整備始まる
昭和25年(1950)頃   樹木園ほぼ完成
昭和29年(1954)   山梨県林業試験場安藤愛次ら寒冷地樹種育苗育林試験企画
昭和30年(1955)   寒地性樹種育林試験開始
昭和46年(1971)   森林の保健休養に関する研究開始
昭和54年(1979) 08月 山中湖村に役場庁舎用の売払
昭和57年(1982)   第1期試験研究計画実施
平成03年(1991) 12月 I林班に管理事務所新築
平成04年(1992)   第2期試験研究計画実施
平成14年(2002)   第3期試験研究計画実施
平成23年(2011)   第4期教育研究計画実施、「富士癒しの森研究所」へと改称

(2)歴代富士演習林長

期間(年度) 名前
大正14年 − 昭和13年 園部  一郎
昭和14年 − 昭和15年 三浦 伊八郎
昭和16年 − 昭和22年 吉田  正男
昭和23年 − 昭和25年 中村 賢太郎
昭和26年 − 昭和28年 島田  錦蔵
昭和29年 − 昭和30年 中村 賢太郎
昭和31年 − 昭和32年 藤林   誠
昭和33年 − 昭和34年 永田 竜之介
昭和35年 − 昭和38年 島田  錦蔵
昭和39年 − 昭和40年 萩原  貞夫
昭和41年 − 昭和46年 平井  信二
昭和47年 − 昭和48年 扇田  正二
昭和49年 − 昭和51年 朝日  正美
昭和52年 − 昭和53年 郷   正士
昭和54年 − 昭和62年 前沢 完治郎
昭和63年 − 平成01 年 熊谷  洋一
平成02 年 − 平成04 年 井出  雄二
平成05 年 − 平成07 年 大橋  邦夫
平成08 年 熊谷  洋一
平成09 年 八木  久義
成10年  − 平成11 石田   健
平成12年  仁多見 俊夫
平成13年   酒井  秀夫
平成14年  鈴木  和夫
平成15年 −  平 成21年 石橋  整司
平成22年  後藤  晋
平成23年  石橋  整司
平成24年 −   浅野  友子

 (3)昭和10年12月10日の富士演習林鳥瞰図

歴史的な資料は無いかと探していたらありました。図題は右から「東京帝国大学農学部附属富士演習林鳥瞰図」と書かれていて、左下には山 中湖位置図とともにDec.10,1935の日付が入っています。位置図は富士山を中心に描かれ、鳥瞰図は南西の方角を上にして描かれて います。この南西の方角にあるものは言うまでもなく富士山です。鳥瞰図には「高山植物園」、「陸上競技場」、「野球場」、「庭球場」、 「射的場」、「キャムプ場」、「艇庫」、「湖畔亭」、「馬繋場」、「寄宿舎(寮)」、「瞰水亭」の施設があることが記されています。
鳥瞰図

2.地況

 (1)地況と気候及び気象

  本研究所は、山梨県南都留郡山中湖村山中及び平野(東経138゚52′、北緯35゚24′)に所在し、全体としてL字型の 一団地を形 成 しています。全林を3林班に区分し、国有地の部分を・林班(10小班)、借入県有地部分を・、・林班(各14小班)として管理を行ってい ます。尚、現在の面積は、国有地7.86ha、借入県有地30.00ha、総面積37.86haです。  富士山(標高3,766m)の東北山麓、山中湖西岸(標高982-1,060m)に位置する緩傾斜地です。・林班は、東向き、・林班は 東北向きの平地です。・林班は東北向き5〜10゚の緩傾斜地で、西〜西北部にかけて小沢があり、20゚程度の西向き傾斜が続いています。 これらの小沢はいずれも無水谷で、降水は伏流水となって山中湖に達することが知られています。土壌は全面褐色森林土であり、BD型がほと んどです。土性はいわゆる富士マサと呼ばれる火山性の、れき質から砂質のじょう土の未熟土であり、保水力は弱いものです。付近にはマルビ と呼ばれる富士山の溶岩流が露出する場所が多数見られますが、演習林内にはこのような場所は見られません。  本研究所の気象は、富士山の東北山麓の高所という地況から、変化の激しい山地気象の特性を備えており、富士山の立地、地形に強 く支配さ れています。富士山は太平洋岸に位置するため、海からの温暖で湿潤な空気が山麓一帯に多量の雨をもたらし、霧の発生が極めて多いことが知 られています。また、独立峰であるため、全体に風の影響を強く受ける傾向があります。更に、南斜面の表富士と北斜面の裏富士では、気象に かなりの相異が見られ、本演習林は、海洋性の表富士から内陸性の裏富士への移行地帯に当たるため、より複雑な気象環境にあるといえます。  本演習林内の気象観測は、昭和28(1953)年に始まり、旧管理事務所に隣接する標高1,000mの地点で行われています。平成 13〜 22(2001〜2010)年の10年間の平均値を示すと次の通りです。  年平均気温は9.1℃、最暖月の8月(年により7月)の平均気温は25.35℃で最高気温は32.0℃、最寒月の2月(年により1 月)の平均気温は-9.60℃で最低気温は-16.1℃を記録しました。温量指数(暖かさの指数)は約75で冷温帯に属し、年較差が比較 的大きいことから内陸型に近い気候と言えます。年平均降水量は2,744mmで多雨地帯であり、積雪は比較的少な いが最大積雪深は98cmと年により変動が大きいことが観測により明らかとなっています。  

(2)富士演習林気象データ(2001年東京大学演習林気象年報より)

*注意事項 ・公開された気象データを利用し,発表(講演・学会発表など)や印刷物の作成(論文・報告書など)を行う場合,出典への言及や記載を必ず 行うこと.  また,富士演習林宛てに印刷物(別刷など)を1部送付すること. ・公開されているデータは,後日修正される可能性があることに留意すること.  なお,修正を行った場合はこのHP上で修正日を明記する.  
気温 Air Temperature ℃ 湿度 日降水量 mm 量別降水日数(24時間)
平均 平均 Mean 月最高 月最低 Precipitation Number of precipitation days in each range
Month 最高 最低 Hum.* 合計 最大 生起日 0.5≦ 1.0≦ 5.0≦ 10≦ 50≦ 100mm≦
Mean Max. Min. Max. Min. % Total Max. Date
1 Jan. -4.2 2.4 -9.8 7.6 -16.5 79.6
2 Feb. -2.5 4.5 -8.8 11.7 -17.1 82.9
3 Mar. 1.4 8.3 -4.7 15.7 -12.2 76.1
4 Apr. 7.3 15.5 0.2 22.8 -12.7 77.2 83 24 30 11 10 4 3 0 0
5.May 12.8 18.8 7.5 25.2 2.3 84.6 320 60.5 23 15 14 12 9 2 0
6.Jun 16.8 21.6 12.8 29 5.7 88.3 191 108.5 14 10 10 6 4 1 1
7.Jul 21.7 28.1 16.8 33.1 12.5 83.2 31.5 20.5 16 4 3 2 1 0 0
8 Aug. 20.3 25.1 17 31.5 13.6 88.3 401.5 189 22 11 8 6 4 2 2
9 Sep. 16.1 20.7 12.7 25.5 0.9 90.6 577 330 10 15 13 9 6 2 2
10 Oct. 10.9 16.4 6.3 21.7 -0.1 90.9 465.5 168.5 1 13 11 10 10 2 2
11 Nov. 4.1 11.1 -1.1 22.4 -6.9 83.9 176.5 62 5 8 7 5 4 2 0
12 Dec. -0.6 5.2 -5.3 10.4 -12.4 78.7
Year 8.7 14.8 3.6 33.1 -17.1 83.7
* Remarks  Hum:Mean Relative Humidity      欠測月日(Not Measured Date):日降水量(Precipitation):Jan.1〜Mar.31 Dec.1〜31

3.林況  

(1)林況

本研究所は、冷温帯の落葉広葉樹林帯に属し、温帯上部から亜高山帯下部への移行地帯に当たります。全面積の約80%は造林地、20%が 疎生林-草原です。造林地内のギャップや林縁にブナ科、カバノキ科、マツ科を主体とする二次植生が介在し、・、・林班の一部ではアカマツ の小林分が見られます。  研究所一帯の森林は、明治時代以前から薪炭林、農用林として利用されていたようで、長年に渡る強い人為の影響により明治時代末期 (1910年前後)には、ミツバウツギ、サンショウイバラ、ヌルデなど擢木林を為していたと推測出来ます。その後、大正2〜 3(1913〜1914)年頃に、現在の・、・林班にカラマツの造林が行われ現在約6haが現存しています。一方、演習林所有以前 (1914年)の・林班は、カラマツ疎林と桑畑でしたが、昭和2〜13(1927〜1938)年にかけて、カラマツの一斉造林が実行さ れ、その面積は6haに達しました。  高層木には、カラマツ、アカマツ、ウラジロモミ、シラベ、ドイツトウヒ、エゾマツ、アカエゾマツなど主に植栽された針葉樹、少数のシラ カンバ、ダケカンバなどの落葉樹があげられます。中層木としては、イヌシデ、ヤマハンノキ、ミズナラ、コナラ、コブシ、コリンゴ、カエデ 類、ミズキ、イヌザクラ、マメザクラなどが、下層には、ミツバウツバ、ウツギ、ニシキギ、メギ、ガマズミ、クロウメモドキ、クロモジ、サ ンショウイバラなどが生育します。上層木の疎開が進んだ場所では、中下層木の林床植生がよく発達しています。また・林班は湖に面している ため、一部風衝樹形のアカマツ疎林及び草原を為しています。  富士癒しの森研究所には上述の森林の他に、針・広葉樹植栽試験林分があり、外来の約15種を含む、約150種の樹木が確認されています。  

(2)富士癒しの森研究所の林相別面積(2000年東京大学「演習林年報」より)

針葉樹林 混交林 広葉樹林 その他 合計
34ha 1ha 3ha 3ha 41ha

(3)富士癒しの森研究所の道路延長と道路密度

  富士癒しの森研究所の車道と歩道は東京大学の7つの演習林の中で最も高密度に敷設されています。
車道延長 車道密度 歩道延長 歩道密度
1,937m 47.3m/ha 2,357m 57.5m/ha

(4)富士演習林樹木園の主要樹木(永島初義ら1992,「演習林」第29号より)

アカマツ アカエゾマツ アサノハカエデ アスナロ アズキナシ アブラチャン アラゲアオダモ イタヤカエデ イタヤメイゲツ イチョウ イトマキイタヤ イヌウメモドキ イヌエンジュ イヌザクラ イヌシデ イボタヒョウタンボク イロハモミジ ウシコロシ ウツギ ウメモドキ ウラジロモミ ウリカエデ ウリハダカエデ ウワミズザクラ エゴノキ エンコウカエデ オオイタヤメイゲツ オオモミジ オニイタヤ オニグルミ カジカエデ カラマツ ガマズミ キササゲ キハダ グイマツ クマシデ クリ クロウメモドキ クロマツ ケウツギ ケヤキ コバノヤマハンノキ コブシ ザリコミ サワグルミ サワシバ サワラ サンショウバラ シナノキ シラカンバ シラベ シロモジ ストローブマツ スノキ ズミ ソヨゴ ダケカンバ ダンコウバイ ツノハシバミ ツリバナ ドイツドウヒ トウヒ トサミズキ トチノキ トドマツ トネリコバノカエデ ナツグミ ナナカマド ニオイヒバ ニシキウツギ ニシキギ ニセアカシア ニワトコ ノリウツギ ハウチワカエデ バッコヤナギ ハナイカダ ハリモミ ハンノキ ヒコサンヒメシャラ ヒノキ フカギレオオモミジ フジ ホオノキ マメザクラ マユミ マンサク ミズキ ミズナラ ミツデカエデ ミツバウツギ ミヤマイボタ ミヤマウグイスカグラ ミヤマザクラ ムラサキシキブ メギ メタセコイヤ ヤチダモ ヤブデマリ ヤマウコギ ヤマグワ ヤマツツジ ヤマナシ ヤマブキ ヤマボウシ ヨーロッパアカマツ リョウブ

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