講演要旨

(AS09)

生物多様性モニタリングに対する機械学習モデルの活用:
テナガザルの事例研究

VU Tien Thinh1,3,Hoa Thi NGUYEN2,Dena Jane CLINK3

1ベトナム国立林業大学 自然資源・環境管理学部 野生動物学科, vtthinhvnuf@gmail.com
2熱帯森林生物多様性研究所
3コーネル大学 鳥類学研究所 K. Lisa Yang保全生物音響学センター

現在、世界には20種のテナガザルが生息しています。そのモニタリングは、通常、森林内に複数の録音機を設置して数日間にわたり鳴き声を収録する手法をとりますが、生成される膨大な音声データは多大な手作業による処理を必要とします。近年、BirdNETなどの機械学習ツールにより自動音声認識が可能となりましたが、深層学習や自動検知手法をテナガザルの生態や行動に関する実地研究に広く応用した例はまだ多くありません。本研究では、2019年にベトナムのチュモムライ国立公園で収録されたデータを用い、BirdNETによるテナガザルの鳴き声検知を実施しました。最適な構成を選定するため、バンドパス周波数とサンプルサイズによる検知効率の変動を評価しました。BirdNETによる予測結果を検証し、公園全域におけるテナガザルの鳴き声のセグメント数を算出。これらの数値が時間帯や環境変数によってどのように変化するかを検討しました。解析の結果、最適な検知範囲は600–1800 Hzであることが判明しました。雌雄それぞれわずか15サンプルの学習で、適合率(precision)と再現率(recall)はともに80%を超え、30サンプルでは両指標とも約90%に達しました。合計で雌2,162件、雄8,826件のコールセグメントを検知し、その大部分(97%以上)は5:15から7:45の間に発生していました。環境変数との関連では、「豊かな森林および中程度の森林」、「樹冠高」、「植生被覆率」、および「集落からの距離」と強い相関が認められました。本アプローチは、占有モデル(occupancy models)に有用なデータを提供し、テナガザルの個体数密度や生態学的研究の長期的な比較を容易にするものです。

(翻訳 鎌田直人)

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