講演要旨

(AS05)

生物多様性クレジットとオフセットの実装:
失敗の原因と成功のための設計

久保田 康裕

株式会社シンク・ネイチャー 琉球大学

ネイチャーポジティブの実現に向け、生物多様性クレジット・オフセットの市場メカニズムへの期待が高まっている。しかし、科学的知見に基づかない実装は、開発に伴う環境負荷の過小評価や、実効性の伴わない形式的な環境貢献を招くリスクを孕んでいる。本講演では、これらの仕組みが機能不全に陥る主要な原因を整理し、科学的根拠に基づく設計指針を提示する。失敗の根源は、生物多様性の「代替不可能性」や「地域性」に関する定量評価の不十分性、および評価指標の恣意的な選択、あるいは保全再生事業のアウトカム評価の脆弱性によって、生物多様性のロスやゲインを適切に定量化できない点にある 。実装を成功させるためには、科学的データと適切なアルゴリズムに基づいた「自然会計」の構築が不可欠である。具体的には、ミチゲーション・ヒエラルキーを前提とし、生物多様性保全優先度やハビタットの質的・空間的な価値を高解像度で定量することである。生物多様性クレジット・オフセットの失敗要因は比較的明確なので、実装においては失敗回避の観点から関連データテクノロジーを発展させて、その成功確度を向上させることが有望である。

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