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第一苗畑

1.実習

1-1.造林学実験
 田無演習林で最も代表的な実習は、農学部森林科学専攻の3年生を対象とした「造林学実験」と言えるでしょう。造林樹種の種子のまき付け、苗の移植、挿し木、接ぎ木など苗木生産に関するこの実習は、1931(昭和6)年から毎年継続して行われています。

1-1-1.種子のまき付け
 種子のまき付けの実習では、整地→播種→覆土→床固めを行います。


整地
木の板で土の塊を砕いて細かくすると同時に、過湿にならないよう播種床の中央を高くします。


播種(まき付け)
均一になるように丁寧にまき付けます


覆土
ふるいでふるった土を薄くかけます。


床固め
木の板で土を固めます。
1-1-2.床替え(とこがえ)
 養水分および光を十分与えて成長を促進させるためと、根を切ることで細根を密生させ山出しした時に活着しやすくするため、床替え(移植)を行います。


根切りをした後、今後の成長を見越して、等間隔にマツ苗を移植します。
1-1-3.挿し木
 樹木の中には、枝を土に挿すことで発根し、新たな苗木を得られるものがあります。母樹と同じ形質を受け継ぐため、優れた遺伝形質を持つ樹木を増殖させるのに有効です。この実習では、複数樹種の挿し木を行い、発根のしやすさを調査し比較します。発根しやすい挿し穂の作り方には技術が必要であるため、実習で学びます。挿し木床には、赤玉土と鹿沼土を混ぜ合わせた、保水性と通気性の大きい土を用います。挿し穂は最初根がない状態であるため葉からの蒸散を抑える必要があり、挿し穂は葉の量を少なくし、挿し木床に日除けを設置します。



1-1-4.接ぎ木
 接ぎ木とは、近い種類の樹木を癒合させて、一つの樹木として育てる方法です。
 土台となる「台木」と、増殖させたい「穂木」が必要です。
 実習で採用している接ぎ木の方法は「割りつぎ法」で、切り出しナイフで台木の中央を割るように切り、そこに同じく切り出しナイフでクサビ形に整えた穂木を差し込み、形成層を合わせて接ぎ木テープで固定、保護材を塗布して乾燥を防ぎます。


台木に切れ目を入れます。


台木に穂木を差し込みます。この写真では、「割り接ぎ」をしています。


接ぎ木テープで固定し、乾燥しないよう保護材を塗布します。

1-2.森林動物学実験
 造林学実験の次に歴史が長いのは森林動物学実験です。第一苗畑では、昆虫が苗木の葉を食べることを模した摘葉試験を行い、昆虫の食害が樹木の成長に与える影響について考察します。

1-3.その他の実習
 その他、さまざまな学生実習を受け入れています。近年は、里山の代表的な樹種であるクヌギやコナラの苗を種から育て、里山の保全や管理を学ぶ実習が行われています。


緑地環境実地実習
里山を構成する樹種であるクヌギとコナラを育成するため、移植を行いました。

2.研究

 樹木生理や樹木病理に関する研究など様々な実験が行われており、研究用の苗木生産も行っています。
 
2-1.改良ポプラの遺伝子保存
 1930年頃、ヨーロッパや北アメリカではポプラ(Populus spp.)の成長の良い樹種同士を交配し、更に成長の良い雑種を作る品種改良が盛んに行われました。こうしてできた雑種の品種は改良ポプラと呼ばれ、東京大学の猪熊泰三教授らによって1950年代後半、日本へ紹介されました。植栽後10年程度で伐採可能な大きさになる改良ポプラは、特に、製紙業界からパルプ材として期待されました。田無演習林でも1960年代に品種(クローン)間の成長比較試験が行われ、現在でもその一部が大木となって生き残っています。ポプラは挿し木で容易にクローン増殖できるため、遺伝的に均質な材料を揃えることが比較的簡単です。田無演習林では39品種を苗畑等でコレクションしており、これまでにそれらを材料とした多くの研究が行われてきました。
 ところで、時代の変化は物事に新たな価値を与えることがあります。木材市場の需要変化や国際化に伴い、国内でのポプラ生産の需要は消えていきました。一方、ポプラは2006年に全ゲノムが解読され、遺伝子研究のモデル生物として一躍注目を浴びるようになりました。近年、演習林の教員が行った研究では、ポプラの枝にある種の病原菌を接種すると、品種によって菌に対する抵抗力が異なることが分かりました。このような違いは品種間の遺伝子の違いが関係している可能性があります。全ゲノムの解読が完了しているポプラでは、他の樹木種では難しい、有用遺伝子に迫るような研究が可能となるかもしれません。(科学の森ニュース70号から抜粋)

   
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