研究計画

富士癒しの森研究所では2021年~2030年において、スタディセンター化を目指します。研究所が組織的に取り組む研究テーマを設けるほか、外部からの研究利用を積極的 に受け入れることにより、「癒しの森」に関連する学術知見の生成に貢献します。また、研究知見の社会実装(社会連携)を促す観点から、アクションリ サーチ、市民科学(研究への住民参加)の手法を可能な限り取り入れます。 続・癒しの森プロジェクト概念図
続・癒しの森プロジェクト概念図

研究所が組織的に取り組む研究

1)森林管理

「癒しの森」の管理において、森林景観を中心的な操作対象とし、以下の研究を行います。
   基礎研究テーマ:「科学的な森林景観の観測方法および評価方法
   応用研究テーマ:「森林管理方法の提案

実験フィールドは、2011年~2020年に設定した実証林湖畔広場を活用します。
    実証林:2014年の第一次操作(強度間伐、弱度間伐、無間伐)を完了して以降、毎年林床植生の記録が行われ、2019年に上木 の毎木調査が行われています。
              これら調査データから森林構造・景観の経年変化の差異について検討し、適切な第二次操作を実施します。
   湖畔広場:山中湖に面したエリアを新たに実験フィールドとして位置付けます。芝地・疎林としての特徴を活かし、ハンディキャップを抱 えた人々でも
         親しめる設備を実験的に整備するとともに、景観特性と保養活動の内容を観察し、開放的な森林の活用・管理方法を検討します。

    その他の研究テーマ:「気候変動、獣害、森林病害虫による森林景観の変化」、「保養活動をする人に危害を与えうるマダニ、ツ タウルシ等に対する
                   リスクへの対応
」も検討します。

2)資源化および資源活用

枯損木・枝条・その他資材の有効活用を見出すことは、森林景観の管理に直結するほか、森がもたらす「癒し」をより充実させる可能性があります。積極的に新 技術を導入し、特に「癒し」の観点からその特性を検証します。
研究テーマ:「枯損木の薪利用」について、定量的な把握を行い、地域における薪利用システムのモデルを構築します。これらの知見に基づき、 「各種資材・森林空間の活用に関する教育・体験プログラムを開発・提案する」ことを目指します。

3)ソーシャルデザイン

研究所の位置する山中湖村は、移住者が多く、社会的異質性の高い地域です。研究所ではこれまで、いくつかの地域社会に働きかる研究手法(アクションリサー チ)を試みた結果、部分的に「癒しの森づくり」に参加しようとするコミュニティ、あるいは主体が形成されつつあります。引き続き、「癒しの森づくり」を共 通益とする自立的な森林ガバナンスの形成について、アクションリサーチを活用しつつ探求します。
研究テーマ:演習林の⼀部に開放エリアを設けることで、そこの「利用ルールの形成およびその適正化プロセス、ルールの実効性の評価」につい て研究を行います。

4)試験地および基盤データ等

長期的な研究データの取得と蓄積は、大学演習林ならではの研究貢献であるため、実行可能なものを限定しつつ、継続に努めます。これら試験地については、研 究資料を適切に整理・蓄積するとともに、必要に応じて間伐等の施行を実施します。
研究対象試験地:「LTER試験地(モニタリング1000サイト)」については、秩父演習林と連絡しつつ2024年と2029年に調査を実 施します。「シラカンバ景観見本林」は更新のための実験を検討します。

研究利用の受け入れ、共同研究

研究所を癒しの森の研究拠点(スタディセンター)として機能させるため、研究所の森林・施設を活用した各種研究の誘致と研究利用者の支援を積極的に行いま す。 具体的には、研究所施設・試験地等を活用した研究テーマ案や利用可能なデータセットを研究所ウェブサイト等で提示し、基礎的データの提供等を通じて研究を支援します。 特に心と体の健康に関する研究の誘致に重点を置き、前述した研究所が組織的に取り組む研究に関連するテーマについては共同研究の提案を行います。

教育計画

大学教育は、附属演習林の基本的な機能であり、富士癒しの森研究所においても、最優先の事業と位置付けます。 教育フィールドとしての機能の維持・発展を図りつつ、続・癒しの森プロジェクトに基づく独自の教育活動を企画・実施します。

1)実習等の受け入れ

東京大学農学部および大学院農学生命科学研究科の実習受け入れを最優先事項とし、学内および学外の実習利用を受け入れます。 実習利用の受け入れにあたっては、担当教員と十分な連携をはかり、教育フィールドおよび施設の整備に努めます。

2)教育活動支援

教育利用者が研究所の特質を活かして安全かつ充実した教育活動ができるよう、情報提供や提案などの支援を積極的に行います。具体的には、施設設備の活用方 法や実行可能な教育プログラムについて教育利用者に情報提供します。 また、卒論等に適したテーマを提案し、そのテーマを選択した学生に対して指導補助を行います。

3)教育プログラムの企画実施

続・癒しの森プロジェクトに基づき、独自の教育活動を行います。教養学部前期課程における全学体験ゼミナール等で、研究所が主体となる講義を企画・実施し ます。学内他機関との共同実施を視野に、メンタルヘルスやライフスキルをテーマにした教育プログラムを企画し実現します。

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