「デジスコ」による野鳥の生態写真撮影にチャレンジしたころの思い出

 著:村川功雄

 野鳥観察をしていると、(観察対象の)鳥が人影や小さな物音などに驚き一瞬にして飛び去ってしまうことがよくあります。 初心者にとっては、その一瞬に特徴を捉えることは非常に難しく種の同定が出来ないことが度々ありました。 失敗を繰り返していた2006年のある日、雑誌でフィールドスコープを使った野鳥撮影がある事を知り興味を抱きました。 この当時、一眼レフカメラに高額な超望遠レンズを装着しなければ難しいと思っていた野鳥撮影が、「デジスコ(フィールドスコープに小型のデジタルカメラをセットした機材)」を使用することで比較的安価な機材で行えるのです。 そこで検討ののち、早速購入しました。しかし、購入するまでは容易だと思っていた野鳥撮影が、実際に試してみるとなかなかうまくいきません。 シャッターチャンスに恵まれたとしても最初は慣れない操作に戸惑い、レンズ内に被写体(野鳥)を入れるまでに時間がかかりそのうち飛び立ってしまうなど悔しい思いを何度も経験しました。 そんな失敗を繰り返しているうちに何となくコツをつかめる様になり、徐々に被写体(野鳥)をレンズ内に入れられるようになりました。 しかし、今度はピント合わせに悩まされます。 野鳥の目にピントを合わせようとしますが、動きの激しい野鳥をカメラの液晶画面を見ながらフィールドスコープのピント調整ネジで瞬時にピントを合わせなければならず、これがなかなか難しく思うようなピント合わせが出来ません。 少ないシャッターチャンスが訪れ、被写体を上手にレンズ内に捉えて撮影出来たとしてもピントが合っていなければどうしようもありません。 どうやらレンズ越しのピントと撮影後のピントでは若干のズレがあるようで(カメラの癖?)、野鳥の動きに合わせてフィールドスコープを動かすと同時にピントを微妙にずらしながら連写するようにしたところ、これまでと一味違った写真が撮れるようになりました。 今回はその中で最も思い出に残る撮影画像をご紹介したいと思います。どちらともデジスコ画像が無ければ確認できなかった内容だと思います。

初めて確認したカヤクグリ

1枚目は2006年12月に林道のり面で撮影した写真です。 そこにはこれまで確認したことのない野鳥が写っていました。 双眼鏡で観察していても特徴を覚えきれず種の同定は出来なかったと思います。 事務所に戻ってから同僚と撮影画像を見返したところカヤクグリであることが分かりました。 図鑑によるとカヤクグリは千葉では冬鳥とされ、冬場のみ観察できるとされていますが、私や同僚もこれまで確認したことがありません。 そこで千葉演習林内で定期的な調査を行っていた山階鳥類研究所の調査員に確認を依頼したところ、千葉演習林内では初めての情報とのことでした。 もともと飛来個体が少ない上、藪になったような物陰を好む習性もあって、これまで確認記録が無かったと思われます。ちなみに、その後の確認はできていません。

(左写真)足に結束バンドと足環を付けたオシドリ
(右写真)足環のアルファベット表記が確認できる

 2枚目は2007年5月に河川で撮影したオシドリのオスです。 足元を拡大して撮影してみると右足には黄色と青色の結束バンド、左足には足環が装着されローマ字で「INOKAS・・・」と刻まれていることが確認できました。 調べてみると井の頭公園では「オシドリ千羽計画」という繁殖・放鳥プロジェクトが行われていて、撮影したのはそこで放鳥されたオシドリであることが分かりました。 その個体が親となり、こちらで紹介した巣箱や良好な天然林が多く残されている林内の樹洞で繁殖しているのかもしれません。  これら画像は明確な証拠(記録)となり、新たな基礎データとなり蓄積されています。 しかしながら、昨今高倍率なズーム機能を搭載した比較的コンパクトな高機能一眼レフカメラが手頃な価格で購入できるようになり、持ち運びや取扱いの難しいデジスコはお蔵入りとなりました・・・。