ため池シンポジウムホーム
活動紹介

■ 活動紹介 詳細情報 ■
第2日
2007年 9月16日(日)

13:30−14:30

会場 12号館 3階 1232a・b・1233教室

●ポスターおよびパネル発表

1)国際ため池シンポジウム2006 in 姫路 第1回ため池シンポジウム実行委員会

  岡田真美子(兵庫県立大学・環境人間学部・環境宗教学研究室)

わたくしたちのグループは、(独)日本学術振興会人文・社会科学振興プロジェクト研究事業の日本的知的資産の活用プロジェクト、兵庫県、兵庫県立大学大学院環境人間学研究科が協働して立ち上げた第1回シンポジウム実行委員会です。2006年11月10−11日姫路で、全国一のため池数をほこる兵庫県で、ため池の継承と再生について考える世界初の国際シンポジウムを企画・運営しました。スリランカと韓国のため池研究者の基調講演、ため池研究者によるパネルディスカッション、分科会、全体会を行い、ため池の多面的な機能を認識する中から、ため池の過去・現在・未来の課題が見えてきました。この第1回ため池シンポジウムの立ち上げから当日の模様までを報告します。

2)ボーイスカウトにおける自然教育
  長岡史晃(ボーイスカウト犬山2団)  
みなさんはボーイスカウトをご存じですか?ボーイスカウトは青少年の健全育成を目的とする世界中のほとんどすべての地域で行われている活動です。ボーイスカウトというとキャンプやスキーなどの野外活動、募金活動や美化活動などのボランティア活動といった様々な印象を持たれると思います。今回は、最近の子供達には疎遠になってしまっている、ため池や川を中心とした遊びや、水辺の生き物の観察、ゴミ拾いを通した環境問題への教育など団で行った自然教育活動を紹介します。

3)昔はいろいろなところで役立った ため池を考えよう
  大橋一弘(ミツカングループ本社) 
江戸時代、知多半島では溜池は、多く造られ、その溜池から田畑に水を潤していました。また、その溜池の築造技術を用いて「黒鍬師」となって各地へ出稼ぎに行き、地下に漏れた水が酒造りの水になったりして、意外な面でも活躍していました。

4)外来魚駆除後のカイツブリの繁殖事例
  吉鶴靖則 (財団法人日本野鳥の会 サンクチュアリ室 豊田市自然観察の森担当)
カイツブリは池沼からの減少が顕著で、その理由に外来魚によるヒナの捕食の可能性が指摘されている。 豊田市自然観察の森の上池では、近年、生息魚類のほとんどが外来魚でカイツブリは1989年を最後 繁殖していなかった。2006年、上池の水を総て抜いて外来魚を駆除したが、この中にはカイツブリのヒナを捕食できると考えられる40センチ級のオオクチバスも多数含まれていた。翌2007年には18年ぶりに カイツブリが繁殖し、これまでに3回、合計10羽のヒナが確認されている。外来魚駆除以外は池や周囲の環境にほとんど変化がないことから、カイツブリの繁殖は直接的な捕食者の駆除と、池畔に立ち入る釣り人の減少等によるものと考えている。

5)池干しに伴う在来種のカメ類の保護活動〜加古川市寺田池のケース〜
  西堀智子(和亀保護の会)
2006年秋、加古川市の寺田池(14.6ha)で改修工事に伴う池干しが行われた。水が抜け切らない池中央の泥状の部分には外来種のアカミミガメが多数観察され、石積み護岸が予定されていた池北側の自然林を流れる水路では、僅かながら在来種のクサガメが見つかった。和亀保護の会では、工事終了予定の2年後に、池と水路が在来種のカメ類の棲息環境として相応しいものとなるよう、行政・研究者と協力して、アカミミガメの排除とクサガメの保護、水路の護岸設計に関わることになった。現在までに10回の調査を行い、排除したアカミミガメは822頭、保護したクサガメは103頭。生物に優しい水路設計のために関係者と2度の話し合いを行った。

6)虫いっぱいの里山づくり〜はじまりはため池から  
  日比伸子(橿原市昆虫館)
橿原市昆虫館は、高松塚やキトラ古墳等、古代ロマンの香り漂う大和の地、国の名勝・大和三山『天の香具山』の麓にあり、周りには田畑や家並みが見渡せます。古から脈々と続いてきた人里の中で、私たちは『人と昆虫・人と自然とのかかわり』をテーマに活動を展開しています。奈良県内のため池の昆虫調査に端を発し、周辺の田んぼや溝・小川・雑木林等へと調査フィールドが広がり、また調査だけでなく、実際に池を掘ったり、雑木林を再生しようとする試みへと活動の幅は広がっています。今回は、『虫いっぱいの里山づくり隊』ボランティア活動や、橿原市昆虫館の教育普及活動についてご紹介します。

7)犬山市のため池におけるカワバタモロコの生活史
  荒尾一樹(ため池の自然研究会)・下山淳二(岐阜市役所)
カワバタモロコは、体長35?55mmの日本固有のコイ目コイ科魚類である。東海地方以西の本州・四国・九州の平野部のため池や河川に生息するが、ため池の埋め立てや河川改修、オオクチバスなどの外来種の侵入により生息地が減少している。そのため、環境省(2003)のレッドデータブックでは絶滅危惧IB類、愛知県(2002)では準絶滅危惧に選定され、早急な保護対策が必要とされている。しかし、保護対策に必要な生活史に関する知見が乏しいのが現状である。そこで、我々は1年間にわたって犬山市のため池で、成長や産卵などの生活史に関する基礎的な知見を集積したので、その調査結果を紹介する。

8)愛知県豊田市のため池の動物の現在−特にカメ類について−
  岡田夕季(名古屋大学大学院生命農学研究科)
  矢部隆(愛知学泉大学コミュニティ政策学部)
  織田銑一(名古屋大学大学院生命農学研究科)
1998年から2004年にかけ、愛知県豊田市とその周辺の33箇所の溜池および河川においてカメ類の分布調査および確認したその他の動物の記録を行なった。その結果、カメ以外の動物を記録した23箇所すべての調査地で外来種を確認した。カメの調査では総計461頭を確認し、在来種であるニホンイシガメが最も多く(87%)、外来種であるミシシッピアカミミガメが次に多かった(8%)。本調査地では、溜池に設置された余水吐けからのカメとカエルの落下、カメによるルアーフィッシングに使用する疑似餌や釣針の誤食、および生息地周辺が開発され人が訪れやすくなったことによる外来種の放逐が、在来種の生息を脅かしていると考えられる。

9)知多半島の外来動物の生息状況−特にカメ類を中心にして− 
  矢部隆・野村美巴(愛知学泉大学コミュニティ政策学部) 
知多半島のため池では最近ミシシッピアカミミガメ、ウシガエル、アメリカザリガニ、ブルーギル、オオクチバスといった外来動物が急増しています。1970年以降大量に輸入されたミシシッピアカミミガメは知多半島では先端よりも大都市名古屋に近い半島の基部に多かったのですが、同じく戦後に輸入されたオオクチバスやブルーギルは、人間に運ばれたためか愛知用水が経路となったためか、半島のすみずみにまで広がっていました。戦前に輸入されたウシガエルやアメリカザリガニはすでに半島の先端までまんべんなく分布していました。本活動紹介では、知多半島におけるこれらの外来動物の定着の現状を報告し、在来生物や生態系への影響を考えます。

10)名東自然倶楽部活動の紹介
  堀田守(田んぼグループ代表) 
「名東自然倶楽部」は、66.2haの猪高緑地に於いて、昔ながらの作業を通して、文化や景観を受け継いでいくことにより、貴重な生き物が暮らせる豊かな生態系を維持していくことを目標とし、保全活動をしています。倶楽部内のグループが行う活動の中で、雑木林やため池(大小7ケのため池がある)などの自然環境に加え、園路、竹林、畑、水田、水路などの人工的な構造物を適切に保全管理により多様性のある自然環境の保全、生物相を豊かに維持する目的で活動を行っています。そんな中、田んぼグループでは、井堀の上池・下池のため池を利用して田んぼ体験を行い、メダカや小さな魚・水生昆虫がたくさんみられ、田んぼではカエルが鳴き、そして田には稲が育つ、そんな何気ない風景の景観と、心安らぐ雰囲気を作り出し、自然環境を大切に意識できる場として後世まで残そうと活動を行っています。

11)うるおいのある水辺を求めて  
  後藤公男(大府市蜻蛉の会 [SEIREI NO KAI]会長)
蜻蛉の会は、ため池が身近な存在になることを目的に活動して15年。まちの中心にある、生活雑排水が流入して汚れた新池が活動のフィールドです。自分たちが昔、ここで泳いだように、子どもたちが安心して遊べる池にすることが念願で「できることから始めよう!」を合言葉に、さまざまな活動をしてきました。今回は、水質浄化対策として、会の名称に因んだトンボ形の生簀に水草のホテイアオイを植栽して池の富栄養化防止に、また手づくりの水車で池水を汲み上げ、浄化材に廃棄物等を利用した浄化プラントをパネル展示します。

12)もっと知ろう ため池
  愛知県知多農林水産事務所建設課
「あぶない!よい子はここで遊ばない」・・・ため池でよく見る看板です。本当に、よい子は遊んじゃいけないのでしょうか。ため池について、もっと知ってみませんか?
ため池は、農業用水として使うことはもちろん、他にも、生物の棲み家、人々の憩いの場、洪水の調節、緊急時の水源など、いろいろな役割を持っています。しかし、近年都市化の進展による環境悪化や、埋立てによる減少など、様々な問題が生じています。このような中で、私たちは、多くの人にため池のことを、もっと知ってもらうため、いろいろな活動をしています。今日は、活動の一部をパネルで紹介します。

13)私たちの自然再生活動  
   NPO カエルの分校
埋立ての危機にあった竹村新池の自然再生と、山間に放置された田んぼを生きものの生息空間として蘇らせながら子どもたちの自然体験の場として提供している様子などを紹介。

14)愛知県におけるメダカの遺伝子の差異について
  NPO リリオの会
尾張弁をしゃべるメダカと三河弁をしゃべるメダカ−はたして知多半島のメダカは何弁をしゃべるのか?

●ブースその他

1)ため池の自然研究会
ため池は人里近くにあり、昔から人々の生活と深いかかわりを持った存在でした。農家の集落と水田、ため池、里山が一体となってつくりだす風景は、私達が心に抱くふるさとの原風景だと思います。しかし、近年都市周辺では、開発による埋め立てや汚濁が進み、我国の文化遺産ともいうべきため池が危機的状態にあります。このような中で、「ため池の自然研究会」は、ため池に関心をもち、そこに生息する生物は勿論、水環境、身近な水辺としての活用など、広くため池にかかわる分野を科学的に研究調査しています。調査結果の一部をパネル展示します。 

2)日本学術振興会人文・社会科学振興プロジェクト「青の革命と水のガバナンス」研究グループ
  蔵治光一郎(グループ長・東京大学愛知演習林) 
水を巡る諸問題の解決=「青の革命」は、灌漑、農薬、肥料等の科学技術による「緑の革命」とは異なり、水だけでなく土地利用や生態系についての科学技術に加えて、法制度、経済、歴史、文化、人間の心のあり方を踏まえた、従来の水管理とは質的に異なる「水のガバナンス」の構築が必要です。
 本研究グループは、水を巡る諸問題における住民参加等の事例研究を通じて、「青の革命」に寄与しうる問題解決型の学問の結集・再編を進め、水問題の実態と本質を把握し、問題の解決に寄与するための学問のあり方を示すと同時に、「青の革命」に関する社会提言を行い、水問題の解決に具体的に貢献していく研究グループです。

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