北海道演習林・植生調査

目的:森林の取り扱いを考えるためには、対象となる森林がどのようなものであるかを認識する必要がある。森林は、気候、地形、そこに分布する植物相、人為などによりそれぞれの場所で独自の生態系を発達させるが、目の前の森林がどのような位置にあるのかは、まず、その森林の構成を把握することから始まる。植生調査はそのための重要な手法のひとつである。多くの森林は垂直的な階層構造をもっており、それが、森林における生物の多様性の維持と密接にかかわっている。そのため、階層区分と樹種の同定、それぞれの現存量を把握することが大切である。一方近年、森林における生物の多様性を評価の観点から、枯れ木や倒木、樹洞の有無などが、森林のQualityを評価するうえで、重要であるとの考えが広がっている。そこで、実習では、北海道演習林の河畔林(渓畔林)を対象に、その内容を説明できる資料を取得したい。また、その結果を他のタイプの森林と比較することにより、河畔林の特徴について検討したい。

(なぜ河畔林を調査するのか):河畔林の特徴を、キーワード3つで表すと、線状分布、攪乱、湿潤 であろう。いろいろな森林があるが、河畔林にはその顕著な特徴が現れていたり、独特の機能を認めることができる。これらのことが、その森林生態系をどのような構成にならしめているのか、河畔林生態系の特徴をどう表現できるか、各人あらかじめ考えたり、予習したり、仲間と議論しておくとよいだろう。

7月23日

1.調査プロットを設置する・・・まず25m四方の方形区を、ポケットコンパスと巻き尺(または間縄[ケンナワ])を用いて測量し、四隅に杭を打つ。四辺にスズランテープを張る。これを隣り合わせで4つ、全体で50m四方ないしは25mx100mのプロットを設定する。
実際には,事前に演習林の方にプロットを用意しておいていただきます.以下の樹木調査そのものを実施した後で,体験的にコンパス等を使用する予定です.

2001年プロットの位置・座標の図(2001年9月26日掲載)
2003年プロットに位置図は,追って掲載します

2.方形区の中の胸高(地上約1.3m)直径5cm以上の全ての樹木の胸高の位置に、チョーク(墨、白ペンキなど)で水平に線を引き、胸高直径(DBH=diameter at breast hight)の測定位置に印を付ける。

3.胸高直径を、輪尺または直系尺で測定する。測定しながら、根元にナンバーテープをガンタッカーでつける。樹木番号と測定した直径の値を、記録する。調査用紙/印刷用調査記録用紙

  ※測定器の使い方を確認する。手で触れてなれておく。

  ※必要な人数と役割分担を確認(22日夜)

  ◎ 全ての木を測ることが可能か、効率的か、合理的か。

  ◎ 測定木の選定基準は、どう考えたらよいか。一般的には、どのような基準が用いられているか。→→→ 実際には、胸高位置の直径(胸高直径)が2cm以上とか、樹高が2m以上とかいう基準で、それより太い(高い) 木だけを測定する。

4.測定木の(根元の)位置図を作成する。

  ◎どのような方法が効率的か。(22日夜に確認する)方形区の中での樹木の位置を確認する方法を工夫せよ(手分けして/5m四方の細分区を設置する、プロットの2辺に距離を書いておき直行する2辺に1人ずつたって、xとy方向の位置を記録者に伝える、など)

5.草本層、低木層、亜高木層、高木層の高さと被度を記録する。各プロットの5mごとの格子点の位置、計16箇所で記録する。被度は、20%刻みで、5段階にわけ、目測で評価する。

  ◎各層の区別は可能か。どのような基準で区別するか。

6.樹高の測定(おまけ、時間に余裕があったらやってみる)

  作業の進行状況をみて、樹高型、ブルーメライス、電子測高機などを使ってみる。

7.樹洞のある枯木の調査。植生調査プロット内、ないしは近隣でトランセクト法を実施する。

  ◎選定・記録の基準は。記録する項目としては、何が有効か。立ち枯れ木の森林における機能として、どのようなものがあるか。樹洞に生息する動物として、何がいるか。

樹木リスト

※調査に必要な調査用具、資材など

植生調査記録用紙、野帳(耐水性のものもある)、鉛筆/ボールペン

ポケットコンパス、(三脚)、測量ポール(白と赤の縞縞の棒)、巻き尺/ケン縄

杭、スズランテープ、油性フェルトペン

ナンバーテープ、ガンタッカー、チョーク(墨と筆、マジック、白ペンキと筆)

輪尺/直系尺

測高稈、ブルーメライス、電子測高機

◎植物図鑑 こんなのがあります

◎ノートパソコン 石田がPowerBookを1つ持ってきます.あと,研究室のWindowsノートを1台.各班に1つくらい,あると便利・・・2日目の夜に集計もします.

参考文献)芝野伸策・岡村行治・高橋康夫・渡邊定元. 1996. 森林の動態解明のための針広混交林帯での大面積長期継続調査地設定の方法. 日本生態学会誌 46: 155-168.

梶 幹男(研究代表). 2000. 北海道演習林の針広混交林に設置した長期観測大面積プロットの組成と構造. 長期生態系プロットによる森林生態系の解明, 平成10〜11年度科学研究費補助金(基盤研究(B)(2))研究成果報告書:24-39.

考え方について、参考になるページ

松田裕之さんの解説による、アメリカ生態学会の生態系管理の考え方