都市林のキツツキたち

 著:相川美絵子

 田無演習林は住宅地に囲まれぽっかり残された森林です。平日の日中は一般公開をしているため、公開前の30分間ほど、 見回りを兼ねて野鳥に出会うことを楽しみにしています。 以前から、キツツキの仲間の巣穴が幹に縦につらなって作ってあるのは知っていて、スズメくらいのサイズのコゲラはしばしば見かけていました。 あまり警戒心がなくて近くまで寄ってくることがあり、夢中に木をつついて餌を食べている様子が微笑ましいです。

サクラの幹に作られたキツツキの巣穴。 見学路とは反対側につくられていたので、倒れるまでその存在に気づきませんでした。(左) 夢中に木をつついているコゲラ。木の幹に垂直にとまれることはもちろん、傾いた木の下側でも大丈夫です。(右)

 3月のある朝、コナラの枝にアオゲラが1羽留まっているのを見つけました。 緑色が特徴的な、コゲラの2倍ほどのサイズのキツツキの仲間です。不思議な動きをするなぁ、と思って見ていると、 枝の叉を挟んで反対側にもう1羽のアオゲラがいて、お互い首を振り振りしあっているのです。求愛ダンスです! さらに3羽目のアオゲラがやってきて、後ろから見ています。代わってダンス相手になろうと狙っているのでしょうか?

求愛ダンスをするアオゲラのペア(中央)ともう1羽(右)

 別の冬の日、背中が白黒の縞模様で、お腹が赤い、ここ田無演習林では見慣れない鳥が枯れ枝をコツコツと叩いていました。 もしやと思い、写真に収め、後で調べてみると、アカゲラとのこと。田無演習林では初記録です。

 キツツキの仲間は、樹木に害を及ぼすカミキリムシの幼虫を頻繁に食べるので、森林を守っているとも言えます。 彼らは木の枯れた部分に巣穴を作るため、枯れた木、弱っている木が林内に残されていることが必要です。 田無演習林では見学路方向に倒れそうな枯れ木や、折れたら見学者に当たる可能性のある枯れ枝は取り除くようにしていますが、 そうではない枯れ木、枯れ枝は残されているので、キツツキの仲間も来てくれるのかもしれません。 山に行かないとキツツキの仲間に会えないと思っていましたが、街中にある森林でも出会えることを知りました。