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もしかしてミヤマカケス
著:遠國正樹
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「ガサガサッ、ガサッ、ガサッ」
静まり返った森の中、笹を掻き分けて歩く。いつものように額に汗を流しながら山を歩き回っていると、、、
『ギャ―、ギャ―』
《何だ?今の不気味な鳴き声は。》
私は森に携わる仕事をしていて、たびたび森で聞こえるこの鳴き声が気になっていた。
ある休日の朝、いつもより少し早く目が覚めた。カ―テンの隙間から僅かに明かりが漏れている。まだ眠たい。
虚ろな目でベッドの上で横になっていると、、、
『ギャ―、ギャ―』
聞き覚えのある不気味な鳴き声がした。正体が気になり、勢いよくベッドから飛び起きた。
カ―テンを一気に開けて窓から外を覗き込んだ。びっくりしたのか、相手は勢いよく去っていった。
それでも、茶色がかった橙色の頭部と、綺麗な青い羽が特徴的な鳥であることは確認できた。
翌日に職場の先輩に尋ねると、どうやら正体はミヤマカケスという鳥であることが分かった。
先輩から借りた鳥類図鑑を開いて確認すると、確かに目撃した鳥と特徴が一致していた。
謎の声の正体が判明して、私の心は充足感に満ちていた。
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木の実をくわえるミヤマカケス
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それからしばらくして、森の中で「フワッフワッ」と飛んでいるミヤマカケスを目撃した。そして木に留まり、
《いつもの不気味な声で鳴くのかな。》そう思って観察していると、、、
『ピ―ヒョロロ、ピョロ』
別の鳥の鳴き声が聞こえた。
《この声の主はトビだ。おおかた頭上で飛んでいるだろうな。》
木々の隙間から空を見上げた。すると再び、
『ピョロ、ぴ― 』
何だか微妙にトビとは違う鳴き声が聞こえた。それも上からではなく、さっき見ていたミヤマカケスの方からだ。
《もしかしてトビの真似をしているのか?》
その日の仕事を終え、再び先輩から借りた鳥類図鑑を手に取った。
そこには、ミヤマカケスはタカ類や猫などの鳴き声を真似ると書いてある。
この時、私が聞いたトビに似た鳴き声はミヤマカケスであると確信した。
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とび姿(左)、幼鳥のころ(右)
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私はそれから少しずつ、仕事の最中に聞こえてくる鳥の鳴き声に耳を傾けるようになっていった。
そのおかげか、次第に判別できる鳥の種類も増えていった。
クマゲラもその内の一つで、私が仕事をしている富良野の森では比較的容易に鳴き声を聞くことができる。ある日のこと、
『クルックルックルックルックル』
《お、またクマゲラの鳴き声が聞こえた。本当に分かりやすい鳴き声だな。》
この日も鳴き声を聞くことができた。またその数日後、
『クルックルルッく』
何だか微妙にクマゲラとは違う鳴き声が聞こえた。もしかしてと思い、注意深く鳴き声を聞いていると、
『ピョロ、ぴ―。・・・クルっく。・・・・・・・・・・ギャ―、ギャ― 』
《やっぱり、ミヤマカケスだ。トビとクマゲラの鳴き声を真似しているのか。》
複数の鳴き真似をするのは初めて聞いたので、その能力の高さに感心していた。
と同時に、鳥の鳴き声を少しだけ判別できるつもりになっていた私は、また自信を無くした。 それにしても、
《こんなに綺麗な声で常に鳴いていたらもう少し人気がでるのではないだろうか?》
と人間目線で勝手なことを思ってしまう。その不気味な鳴き声のせいか、身近にミヤマカケスが好きだという人を私は知らない。
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それからしばらくして、またクマゲラの鳴き声を聞いた。
「今のはクマゲラの鳴き声だよね?」
と、職場の同僚に尋ねられたので、
「分かりません。」
と答えた。予想外の返答をしてきた私に対して同僚は、
「え!?」
と驚いた様子だった。
《もしかしてミヤマカケスかもしれないので・・・》
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冬の北海道にて
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