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    演習林の風穴地帯 〜そのメカニズムと特異な地表植生〜

 冬期間、辺りは深い雪に覆われた山の中で、ところどころに雪が溶けている場所(写真左下)を発見することがあります。 よく見てみますと、小さな穴があり中から温かく湿った風が吹き出しています。これを「風穴(ふうけつ)」といいます。 風穴とは傾斜地に堆積した岩礫や岩屑の隙間が地表面に開いた穴のことです。 こうして出来た穴を通して、空気が地下の岩の隙間を対流している地域一帯を「風穴地帯」といいます。 一般に風穴地帯には、夏季に斜面の上部から進入した空気が冷やされながら流下し、斜面の下部から冷たい風が吹き出す「冷風穴(下部風穴)」と、反対に、冬季に斜面下部から冷たい風が入り込んで、地中で温められながら上昇し、斜面上部から吹き出す「温風穴(上部風穴)」があります。 右下の写真は人がすっぽりと入ることができるくらい大きな温風穴で、冬の間、中ではふんわりと暖かく湿った風を感じることができます。 それは写真の眼鏡が曇っていることで確認できると思います。 また、冷風穴付近は局地的に低温となるため、周辺の植生とは明らかに異なった特徴を持つ風穴植生が形成される場合があります。

 北海道演習林には、これまで2カ所の風穴地帯が確認されており、いずれも十勝溶結凝灰岩地に存在しています。 この写真(左下)を撮った風穴地帯の冷風穴付近には、標高360mと低標高ながら高山性植物のイソツツジやコケモモ、オオタカネバラがみられ、林床はミズゴケ類に覆われています。 また、本州北部で風穴地帯に出現するとされるアオキガハラウサギシダ、キタノミヤマシダといった希少なシダ植物がみられたり、エゾムラサキツツジ、コヨウラクツツジ、オオバスノキ、ウスノキ等のツツジ科小低木が繁茂するといった、周囲とは異なる特異な植生相を形成しています。

Matsui,M. Kimura,N. Inukai,S.

 

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