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    なぜ?3年周期でシナノキは初夏に紅葉するのか!

 シナノキハムグリハバチ(Parna kamijoi TOGASHI)は、潜葉性昆虫です。 幼虫はシナノキ、オオバボダイジュ(以下、シナノキ)の葉に潜り、表皮を残し葉肉だけを食べます。 そのため幼虫に食べられた葉は、袋状になります。 袋状になった葉にはたくさんの糞が残され、幼虫がいなくなっても被害を受けたことがすぐに判ります(写真-1)。 袋状になった葉は、6月中旬ぐらいまで樹冠に残ります。そのため初夏なのにシナノキだけが紅葉したように見えます(写真-2)。

 シナノキハムグリハバチは、3年周期で大発生を繰り返します。 演習林においても、過去に5回(1988、1991、1994、1997、2000年)の大発生が観察され、2003年は大発生が予想された年です。 成虫は体長が3〜5mmで雌の方が雄より体が一回り大きいです。 写真-3は産卵中の雌です。 5月下旬、シナノキが開葉するのに合わせて交尾、産卵を開始します。 産卵行動は3〜4日で終了しますが、その間はシナノキの樹冠には、成虫が群がるように飛び交っています。 卵は葉の縁に産みつけられ、1週間ほどで孵化します。 幼虫は2週間ほどシナノキの葉の中で生育して、6月中旬になると葉を食い破り地上に落下してきます。 幼虫脱出のピークには、落ちてきた幼虫が下草に当たってバラバラとまるで大粒の雨が降っているような音がします。 地上に落ちた幼虫は地中に潜り蛹となります。そして、ほとんどの個体はそのままの状態で3年間を地中で過ごします。

 シナノキハムグリハバチの被害による枯死木はこれまでに確認されていませんが、3年という短い間隔で被害が発生するためシナノキに蓄積されたダメージは相当大きなものと考えらます。 寄生者からの逃避や寄主(シナノキ)へのダメージを軽減して共存をはかっているなどと考えられますが、何故、規則正しく3年周期で大発生を繰り返すのか理由は明らかになっていません。 被害が確認された当初は、森林被害と呼べない程度のごく普通にみられる昆虫種の個体群密度の上昇でした。 しかし、それが3年周期で繰り返されるうちに、そのつど被害地域、程度の拡大が続きその影響と思われる枝枯れが目立つようになってきました。 近い将来、枯死木の発生も予想されます。 今後、適切な対策をとるためにも、何故、周期的な大発生を繰り返すのか、その被害がシナノキの生育にどう影響しているのかなどを調査、解明していく必要があります。

Iguchi,K.

 
 写真-1
 写真-2

 写真-3

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