ハイパー図鑑−ブナの種子食性昆虫
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作者：鎌田直人
総論
ブナの種子を食害する昆虫は、これまでに27種が記録されています（五十嵐 1996, Igarashi & Kamata 1997）。このハイパー図鑑は、ブナの種子を研究する研究者が、将来、共通の土壌でお互いのデータを比較できるようになることを願って作成したものです。したがって、昆虫の系統分類に関する詳しい専門知識はなくても、できる限り同定ができるように作ったつもりです。
28種の昆虫のうちメジャーな種は、ナナスジナミシャク、ブナメムシガ（仮称）、ブナヒメシンクイ、ブナキバガ、ブナミタマバエ（仮称）の5種であり、場所によっても異なりますが、これらのメジャー5種で、虫害の95%以上を占める場合がほとんどです。
メジャー5種は、加害時期にも違いがみられます。ブナが開葉するとすぐに食害するのが、ナナスジナミシャクです。１週間ほど遅れてブナメムシガが加害します。これら２種が早い時期に加害できるのは、卵で越冬するためです。
それに対し、ナナスジナミシャク・ブナメムシガ以外のメジャー３種は、蛹で越冬します。しかも、蛹は落葉層中にいるため、開葉時期と比較した消雪時期の相対的な早さが、これら３種の出現時期に影響します。これらメジャー３種のうち、もっとも早い時期に出現するのがブナヒメシンクイ、その次がブナキバガ、最後がブナミタマバエです。
ブナの種子を加害する昆虫リスト
LEPIDOPTERA
Tortricidae Ptycholoma imitator (Walsingham)
P. lecheana (Linnaeus)
Acleris phantastica Razowski &
Yasuda
A. aestuosa Yasuda
Croesia razowskii Yasuda
C. askoldana (Christoph)
Pseudopammene fagivora Komai*
Argyresthiidae Argyresthia sp.*
Gelechiidae unidentified
species*
Yponomeutidae Ypsolopha prallelus (Caradja)
Y. parenthellus (Linnaeus)
Geometridae Inurois punctigera (Prout)
Operophtera brumata (Linnaeus)
O. crispifascia Inoue
Pachyerannis obliquaria (Motschulsky)
Erannis golda Djakonov
Colotois pennaria (Butler)
Venusia
phasma (Butler)
Noctuidae Orthsia odiosa (Butler)
Sugitania clara Sugi
Telorta divergens (Butler)
Antivaleria viridimacula (Graeser)
Cosmia exigus (Butler)
Enargia flavata Wilenman & West
Chasminodes unipuncta Sugi
C. nervosa (Butler)
DIPTERA
Cecidomylidae unidentified
species*
* : ブナの種子のみを加害するもの
引用文献
五十嵐 豊1996.
ブナ林・ミズナラ林の種子生産とその害虫. 森林総合研究所東北支所年報 37:39-44.
Igarashi, Y.; Kamata, N. 1997.
Insect predation and seasonal seedfall of the Japanese beech, Fagus crenata
Blume, in northern Japan. J. Appl. Ent. 121(2):65-69.
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最終更新日 2000/10/10