論文の書き方
金沢大学理学部生物学科自然史講座 助教授 鎌田直人
論文を書くときに注意すべき点を整理しました。卒論生、修論生、必見!
基礎編
1.緒言 Introduction
イントロは、これまでの論文を引用しながら、着眼点の新しさ、これまでの研究の問題点を整理して、これから書こうとしている研究の意義を読者に説くためのものです。対象としている昆虫や植物の解説を長々と書いている論文をときどき見かけますが、このようなイントロが論文として不適当であることはいうまでもありません。昆虫や植物の説明が不要といっているのではなく、中身や研究の重要性を理解するためにどうしても必要な予備知識程度にとどめるべきです。
2.材料と方法 Materials & Methods
論文を読んだ読者が実験や調査を再現できるように書く必要があります。解析手法や統計手法についてもマテメソで述べるようにします。
3.結果 Results
単なる結果の羅列に終わらないこと。ひとつひとつの結果について、どのような意図でその結果を出しているのかが読者に伝わるように書く必要があります。ストーリー性が必要です。そのためには、多少考察めいた内容を書くこともあります。「結果」と「考察」部の線引きは人によって意見が食い違うこともありますが、私は、その論文研究で得られた結果だけから、論理的に導き出されるものは結果で述べてかまわないと考えます。
また、論文の主題からはずれている結果は、それがどんなに苦労してとったデータであっても、思い切って「きる」必要があります。調査や実験をして結果が出ましたという結果は、論文に含めるべきではありません。研究を行った本人からすれば、断腸の思いがあるでしょうが、読者からすればページの無駄です。投稿論文の場合、そのような部分はいずれ審査の段階で削られるか、わるくすればリジェクトの口実にされかねません。データとして貴重なものは、(「論文」というカテゴリーに対して)「資料」というカテゴリーで掲載してくれる学会誌がありますから、そちらの方に改めて投稿するべきです。
4.考察 Discussion
論文で一番重要な部分です。この論文で筆者がいいたいことを、自分の結果とこれまでに発表されている論文の結果を踏まえながら、ストーリー性を持たせて展開していくことが必要です。今書いている論文の結果と一般的な科学的常識や法則以外のことは、すべて他の論文を引用しながら論理を展開していきます。
5.その他
はじめて論文を書く学生が必ずと言っていいほど間違うのが、図表の説明の位置です。図の場合は、説明は図の下に入れます。表の場合は、説明は表の上に入れます。写真は図と同じです。写真をナンバリングをPhoto、Plate、写真などのように、図(たいていはFigure)と独立してナンバリングする場合と、図と写真を一緒にしてナンバリングする場合があります。投稿しようとする雑誌の投稿規定に従うこと。
上級編
酒井聡樹 (1995):これから論文を書く若者のために.日本生態学会関東地区会会報
27-39
に詳しい。
役に立つリンク集(東北大学 酒井聡樹先生のHP)
(最終更新日 2000/12/10)