所属
 金沢大学 理学部 生物学科 自然史大講座 生態学分野(学部)
 金沢大学大学院 自然科学研究科 生命・地球学専攻 自然史講座 (博士課程前期)
 金沢大学大学院 自然科学研究科 生命科学専攻  生物多様性動態学 (博士後期過程)
学部3年生・大学院受験生に贈る
鎌田直人といっしょに何が研究できるのか?
研究対象
研究対象は、基本的には昆虫ですが、昆虫に関係することであれば、植物や鳥・菌類・魚をメインテーマにしてもかまいません。基本的には、昆虫との関連がなければ不可ですが、個体群動態など、私の関連する分野でフォローができるものはOKにしたいと思います。個別に相談に来てくれることを希望します。
研究分野
 私の研究分野は、個体群生態学、群集生態学、生物間相互作用です。
 なかでも、特に、得意とする分野は、「長期の個体群動態」、「森林食葉性昆虫の個体群動態」、「食葉性昆虫と植物の相互作用」、「種子食性昆虫と樹木の間スティングの相互作用」、「種子食性昆虫群集の構造」、「昆虫と病気の相互作用と個体群生態学+疫学」などです。個体群・群集・相互作用をしっかりと研究するのであれば、研究対象はあまり問題になりません。
指導方針
 
 基本的には、来るものは拒みませんが、去るものも追いません。学部4年の1年間だけ勉強したい学生、修士まで勉強したい学生、博士課程へ行きたい学生、どれでもOKです。ただ、私のもとでどのくらいの期間論文研究を続ける予定なのかについて、ある程度はっきりした考えをもっていてほしいと思います。なぜなら、研究の期間によって、論文テーマに適不適があるからです。わかりやすい話をすれば、学部4年の卒論研究だけで就職する学生が、1年に1世代しか経過しないブナアオシャチホコの個体群動態を研究することは不可能です。また、6月に教育実習を行いたい学生には、その期間は実験や調査がないようなテーマを考える必要があります。もちろん、当初の予定が途中で気心が変わることはよくあることで、それはしょうがないことです。

 私のもとで論文研究を行うことは,決して楽なことではないと思います。楽をして学士や修士の称号を取ろうという学生、学部4年生や修士の期間、就職活動をメインに過ごしたい学生にとっては、たぶん私は不向きでしょう。
 逆に、短期間でもよいから一生懸命研究をやってみたい学生、研究を一生の仕事に選びたい学生には、指導不足という不満を感じることはないと思います。また、同じ期間論文研究を行った他大学の学生と比べて、決して引けを取ることのない実力と実績(学会発表や学会誌の論文)をつけることができます。これは、就職の際必ず役に立ちます。一生懸命やって、新しい発見に喜びを分かち合える学生を大歓迎します。

 卒論研究でも、しっかりと研究すれば学会誌に発表できる研究テーマを、責任をもって与えます。逆にいえば、たとえ卒論研究とはいえ、しっかり研究しても学会誌に載る見通しのない研究テーマはお断りします。それは、卒論研究をはじめとする論文研究は、高校生のときまでの自由研究などとは一線を画すべきだという私のポリシーがあるからです。

 卒論だけで就職してしまう学生にとっては困難ですが、進学する学生には卒論研究の内容をレフェリー制度のある学会誌へ投稿するように指導します。修論研究の内容を学会誌に投稿することは当然のことと考えています。
 修士に進学するかどうかに関係なく、4年生のうちに最低1回は学会で発表する経験をしてもらいたいと考えています。具体的には、学部4年の秋に最初に学会(昆虫学会・日本林学会中部支部会など)デビューすることを一つの目標にしています。修士へ進学する学生は、3月末〜4月初頭にある学会(生態学会・応用動物昆虫学会・林学会など)で、最低1つを発表することをノルマとします。
論文研究に対する私のポリシー
1. 最先端の研究を行うべし
 学生の卒論・修論が、小中高生の自由研究と一番違う点は、研究の最先端を常に意識して学会誌に載せることを常に念頭におくことであると考えています。そのためには、自分がやろうとしている研究について、最先端がどこまでわかっていて、自分がこの先どこの部分をどのような方法で行えば、最先端になりうるのかを勉強し、考え、実行し、まとめ、発表することが、大学や大学院の論文研究として必要です。

2. 仮説を持つべし
 これから明らかにしようとしている問題に対して、何が問題で、その問題を解決するためにはどうすればよいのかを常に考えながら研究を行うことが必要です。

平成13年度にお薦めの研究テーマ
以下は平成13年度に進学する学生たちにお薦めできる研究テーマです。もちろんこれ以外でもOKです。
1. ブナアオシャチホコの大発生と個体群動態
ブナアオシャチホコは幼虫がブナの葉を食べる蛾の仲間です。10000倍もの密度変動を繰り返しながら、8〜11年の周期で大発生を繰り返します。残念ながらミレニアム大発生はしませんでしたが、これまでの密度調査の結果から、2001年夏には秋田県八幡平で大発生することが予想されています。
以下は、まだ工事中です。
1-1. 捕食性天敵クロカタビロオサムシの研究
クロカタビロオサムシは、甲虫の仲間で、ブナアオシャチホコのh捕食性天敵です。飛翔能力に長けていること、成虫が数年間生きることができることなど、餌−捕食者関係を研究するのには、興味深いテーマです。どのようにして、餌(ブナアオシャチホコ)の大発生を感知しているのかなど、本種のbiologyについても興味深いことがまだまだたくさん残されています。
対象研究期間:3年以上
昆虫の食害に対して、植物も無防備にいるのではなく、いろいろな防御を行っています。ブナもブナアオシャチホコの大発生の後は、葉の質が変化します。このような時間遅れの誘導防御反応は、窒素不足が影響していると考えられています。標高傾度にそった、ブナの誘導防御反応の起こり方を調べます。
1-2. ブナの誘導防御反応
対象研究期間:1年から可 (教育実習が可能です)
鳥の捕食 対象研究期間:1年から可
冬虫夏草など昆虫病原菌 対象研究期間:1年から可
南の地方のブナ林ではなぜブナアオシャチホコが大発生しないのか? 対象研究期間:博士課程進学を覚悟できている学生
1-3. ブナアオシャチホコ関連のその他のトピック
 20世紀前半から日本海側の地方で突発的に発生してきたナラ類(ミズナラ・コナラ)の集団枯死が、1990年頃から、恒常的に発生し、これまでスポット的に発生していた場所から被害地が拡大を続けています。枯死の原因は、カシノナガキクイムシという養菌性キクイムシが運搬するRaffaelea属のアンブロシア菌です。私たちは、1980年代後半からの温暖化傾向が、1990年以降の被害の恒常的な発生と被害地拡大の原因であることを、2000年夏にブラジルで開催された国際昆虫学会で発表しました。
2. カシノナガキクイムシが媒介する病原菌によっておこるナラ枯れ
対象研究期間:卒論研究だけで就職を考えている学生に最適
 キクイムシ類は、最初に少数の個体が木に穿孔すると、集合フェロモンと植物の揮発成分が混ざり合ったフラスというを出します。このフラスのにおいに引き寄せられて、マスアタックが起こるといわれています。カシノナガキクイムシで、イニシャルアタックからマスアタック蛾起こる過程を明らかにすることが目的です。
 調査地に毎日出かける必要がありますが、調査期間は6月中旬から1ヶ月程度です。
2-1. カシノナガキクイムシのイニシャルアタックとマスアタックのプロセスの解明
 このテーマは、キクイムシの集合フェロモンや木の揮発成分を調べることによって、大いなる発展性を秘めた課題です。したがって、修士に進学する予定の学生でも、実行することは可能な課題ですが、化学生態学・化学分析などが研究の中心になります
(以下、順次拡充予定)