第4回世界水フォーラムキックオフ会議


フランスの会議から帰国した私は、香港、台北と経由して午後3時半に名古屋空港に着きました。さっそくメールをチェックすると、ある先生から思いもよらないメールが。何と、2日後に、メキシコで会議があるから出席してくれないかという要請でした。

私は2日後に、「青の革命と水のガバナンス」で事例として取り上げる予定のタイ・メーティア流域に関する打ち合わせ会議を主催することになっていました。そのため、とっさにこの要請に応えるのは無理であると感じましたが、東京の秘書に連絡を取って調べてもらったところ、

「メーティアの会議を途中退席して成田へ向かえば、メキシコの会議の初日には間に合わないけど、2日目には間に合う」

ということがわかりました。ということで、断る理由がなくなってしまったので、行くことにしました。

まず、いきなり、乗り継ぎのロサンゼルスで飛行機に乗り遅れるという憂き目に遭いました。2時間あったのですが、一度米国に入国しないと乗り継ぎできない仕組みで、入国で行列、荷物検査で行列、はるか離れたターミナルまで行き、チェックインに行列。これですでに1時間半を消費しました。カウンターのお姉さんがさすがに見かねて一緒に来てくれたのですが、セキュリティチェックの列への割り込みは「ファースト、ビジネスクラスでないとダメ」と拒絶され、列に並ぶことに。そのうち私の名前が名指しでコールされ、ようやく割り込ませてもらったものの、その先が恐ろしく遠いこと。走りに走ってたどり着いたときには出発2分前。お姉さんに「もう行っちゃったよ」とあっさり言われました。

その後がまた大変。そこのお姉さんは「荷物は下ろされているから受け取るように、チケットについては同じフロアーのインフォメーションに聞け」という。聞くと、同じ航空会社のフライトは明日までないから、別の会社のフライトに乗るしかない。でもそのためには東京−ロスで使ったJALの承認を得る必要がある、といわれました。

とりあえず荷物を取ろうと指定された場所に行くが、出てこない。係りに尋ねるといろいろ調べるが見つからない。「たぶん、メキシコに行ってしまったのでは?」といわれる。しかも、そこでは、JALの承認は必要ない、とまでいわれ、4時間後のメヒカーナ航空のフライトを予約してくれました。

なんで人によって言うことがこうまで違うの???

結局、荷物のことはわからないまま、またまた遠く離れたターミナルのメヒカーナ航空のカウンターへ。しかしここでは、やはりJALの承認が必要だと言われ、JALへ行って承認してもらい、メヒカーナ航空に戻って、ようやくボーディングパスを入手。フライトは順調にメキシコに着いたものの、イミグレーションに長蛇の列。1時間くらい並んでようやく通過し荷物受け取り場へ行くと、私の荷物は無事、ありました!付けられていたタグをみると、やはりロスで下ろされていたようです。

というわけで、予定よりも6時間近く遅れて、でも無事にメキシコに着きました。ある人いわく、「アメリカは労働者の質がピンきりだから、誰に当たるかで対応が全く違うこともよくある」。そうかもしれない。

さて、翌日、第4回世界水フォーラム・キックオフミーティングがありました。10:00〜14:30のみという短い時間でした。

ミーティングは、あらかじめ提示された4つのテーマについての、以下のような議論が中心でした。
・意見を言ってください
・5つめのテーマを追加する必要があるか
・サブテーマやセッションとして重要な項目は何か

参加者は200〜250人程度と思います(メキシコ人が半分くらい?)

最初は、10人くらい座れる丸テーブルに適当に座って、それぞれのテーブルで30分ブレーンストーミングを行い、結果を発表するという形式でした。

私のテーブルは私以外全員メキシコ人で、土地改良区または水利組合の方々でした。彼らは、かんがい設備に政府が投資する資金が不足していることが最大の問題であると主張し、森林の問題を議論する余地はありませんでした。結果発表では、「森林が重要だ」と主張したのは1テーブルだけでした。ここには農水省の方がいて、彼が主張してくれたようです。5つめのテーマとして、洪水渇水、気候変動などを挙げる人が多かったように感じられました。

次に、地域別に座り直して、再度、ブレーンストーミングを行いました。アジア・太平洋地域のテーブルは、6割が日本人でした。日本人は、主に以下の4名が意見を述べました。
・国交省は、国際洪水ネットワーク(IFNnet)及びアジア河川流域機関ネットワーク(NARBO)について
・農水省は、水田の水と生態系に関する国際ネットワーク(INWEPF)について
・福島大の虫明先生は、アジア太平洋水文水資源協会(APHW)について
・蔵治は、水と森林の重要性について、特に中国の植林政策と水の関係などについて

そして、まとめ役の広木謙三氏がこれらの主張および他の国々(韓国、インド、中央アジア)をとりまとめ、口頭で発表するとともに、文書として提出しました。そのいずれにも、水と森林の重要性についての文書が盛り込まれました。

メキシコをはじめ他の参加者からは、森林の重要性について指摘する声は挙がりませんでした。また、森林を専門としているような参加者は私以外には見当たりませんでした。これは、ラテンアメリカの国々では、アマゾンを除き、すでに森林を破壊しつくして久しく、主要な土地利用が牧草地や農地となっているため、水と森林の関係は純粋自然科学の対象とはなっても社会の関心事にはなりにくい、という事情があるものと推察されました。

帰りは、サンフランシスコ乗継ぎでした。乗り継ぎ時間はやはり2時間弱。帰国後24時間以内に次の出張で出国しないといけないので、ここで乗り継ぎに失敗したら本当にやばい、と思ってそうとう警戒したので、無事、乗り継ぎました。さらに成田で名古屋行きに乗り継いで無事帰国しました。

第4回世界水フォーラムは2006年にメキシコで開催されます。場所は、メキシコシティが有力のようです。メキシコシティでは、地下鉄を駆使して移動しましたが、治安が悪いような感じは全然しませんでした。メヒカーナは、中米の国と言われると「俺たちは北米だ!」と怒るらしいです。東南アジアにおけるタイやマレーシアのような優等生の国であるように感じました。

以下は、第3回世界水フォーラム事務局が発行しているNewsletter第139号(2004年4月8日)からこの会議の報告を抜粋したものです。


第3回世界水フォーラム・グローバルフォローアップミーティングおよび第4回世界水フォーラム・キックオフミーティングの報告

世界水の日である3月22日と23日の二日間の日程で、第3回世界水フォーラム・グローバルフォローアップミーティングおよび第4回世界水フォーラム・キックオフミーティングを世界水会議、第4回世界水フォーラム事務局(メキシコ国家水委員会)、第3回世界水フォーラム事務局の共催でメキシコ・シティにおいて開催しました。

初日の午前中に行われた開会式は、気持ちのよい春の青空の下、メキシコ・シティのシャプルテペック公園内にあるメキシコ大統領府の中庭においてフォックス・メキシコ大統領、橋本龍太郎・第3回世界水フォーラム運営委員会会長、コスグローブ・世界水会議会長等のご出席のもと、海外およびメキシコ国内からの参加者約400名が参加し、開催されました。

橋本会長はご挨拶において、第3回世界水フォーラム開催後の水問題解決に向けた世界の動きについて、エビアン・サミットや、3月22日にアナン国連事務総長より発表された「水と衛生に関する諮問会議」などについて触れられた後、第4回フォーラムのホスト国となるメキシコに対して、でき得る限りのサポートをしていきたいと締めくくられました。また、ご挨拶の後には、日本で開催された世界水フォーラムのシンボルとして、「水」と漢字で書かれた大きな瓢箪をフォックス大統領に手渡されました。世界水フォーラムが日本からメキシコへと正式に引き継がれた瞬間でした。

開会式の後には、第3回世界水フォーラムのグローバルキックオフミーティングが行われ、ブレインストーミング形式で、「第3回世界水フォーラムで示された約束を達成するために最も重要なことを三つあげてください」というテーマで議論が行われた後、第3回世界水フォーラムの主要テーマ毎に分かれたグループディスカッションが行われ、その結果がまとめられました。二日目は第4回世界水フォーラム・キックオフミーティングの名のもとに、「メキシコ事務局が提案する第4回世界水フォーラムのテーマについて」ブレインストーミングを行った後、各地域に分かれて、第4回世界水フォーラムに向けた準備活動の過程にどのようにかかわっていくかということが議論されました。

それぞれの議論の結果は、新しくオープンした第4回世界水フォーラム事務局のホームページに近日公開される予定です。一度アクセスしてみてください。
http://www.worldwaterforum4.org.mx/


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