第1回UNESCO-IHP VII タスクフォース会議


標記の会議が2004年3月15日から17日まで、ユネスコ本部(パリ)にて開催されました。
これは、ユネスコ国際水文学計画(IHP)第7フェーズ(2008年より開始)の計画を作るために、ユネスコ水科学事務局が選んだタスクフォースメンバーを招集し、3日間会議室にこもって議論し、ドキュメントを作り上げる、という会議でした。

まず、タスクフォース・メンバーの4人を紹介します。本当は私を入れて6人なのですが、1人は欠席で、5人です。

まず、チェアマンを務めるシャミー。彼はターバンを巻いたシーク教徒、いわゆるパンジャビです。パンジャビは、もともとインドだったtころをパキスタンに取られたのですね。彼はイギリス生まれで、地質学、土木工学を学んでいましたが、思うところあって社会科学に転向。現在はイギリスの大学に所属しています。その博識と語学力には驚くほかありません。アイオナとはポーランド語で、ブランカとはスペイン語で話しています。フランス語もちよっとできると言ってました。彼の携帯電話は左右にパカッと開いて小さいパソコンになるタイプ。子供からのメールをチェックして喜んでます。

アイオナとブランカはともに女性。アイオナはポーランドの鬼才です。彼女のしゃべる英語の早口なことといったら、とてもついていけません。自分は頭がいいんだよ、という様子を振りまきつつ、期待以上の頭のよさを見せてくれる彼女はとても魅力的です。どう見ても20代後半にしか見えない若さ。それでいてユネスコの廊下を歩いているとたくさんの人から声をかけられる広い人脈。彼女のパソコンはワイヤレスモデムを内臓してあらず、ホテルではダイヤルアップが使えずワイヤレスのみなので、ひときわストレスがたまっている様子。メールが読めないのは点滴中の管を引き抜かれるようだと言ってました。仕方がないのでホテルのロビーからポーランド語で電話かけまくってました。専門はエコハイドロロジー、この分野の第一人者です。会話するチャンスがなかったので、お互い認識していませんでしたが、実は2月のオーストラリア・パースの会議にも来ていました。日本にも2ヶ月滞在したことがあり、日本食もお気に入りのようです。

ブランカはメキシカンですが、フランス語も堪能で頼りになります。彼女もメール中毒で、スクリーンにメールの一覧が映し出されているのも気がつかずに返事をスペイン語で書いています。専門は水質汚染で、特に人間の健康被害とか食料の汚染に興味があるようで、話し出すと止まりません。食堂ではいつも大量に取って大量に残し、あんたが水質汚染を起こしている、といつもモハマッドに怒られています。

モハマッド(名前からしてイスラムですが)はイラン人です。彼はアメリカのアリゾナ大にも所属していて、4ヶ月アメリカ、8ヶ月イランという生活をしています。イスラムのくせにお酒のみまくり。イランでは宗教をどれくらい厳密に認識するかで、いろんなレベルがあるそうです(本当か?)。まじめで、コメントは的確、女性2人に負けないくらいよくしゃべります。イランでの月給は4000ユーロもあり(それを聞いたアイオナは、私の年収だわ、と言ってました)学生が30人いて、学生に毎月3000ユーロ使うそうです。どういう仕組みなのでしょうね。専門は何でしょう?あまりにも博識すぎて、わかりません。

そして、このような4人に囲まれて、もっと意見を言えよ、といつも怒られている私がいるのでした。

さて、タスクフォース会議は、まず現在進行中の第6期に対する意見交換を行いました。第6期に対しては、作文はよくできていても、実行計画に問題があり、結果として絵に描いた餅になっている、という意見が大勢でした。

そして、数々のブレーンストーミングセッションを行った後、第7期として以下のようなタイトルとテーマを提唱しました。

Water Dependence, Systems Under Stress and Society Responses

1.System Dynamics of Watershed and Aquifer
2.Ecohydrology
3.Water Security and Health
4.Water Governance
5.Water and Economics

私が「水ガバナンス」のドキュメントの準備を担当したことは言うまでもありません。

ユネスコ事務局は、4つにしよう、4+5は一つにまとめては、と言っていましたすが、タスクフォースには、4と5は別だという意見が強く、まとまらずに解散しました。

その後、チェアマンのシャミーと事務局の間で協議した結果、テーマは以下の4つにまとめられました。

Theme I: Global Changes, Watersheds and Aquifers
Theme II: Governance and Socio-Economics
Theme III: Water and Environmental Management
Theme IV: Water Quality, Human Health and Food Security

この結果は、3月末のビューロー会議、6月の政府間理事会で報告され、加盟各国の意見が集約されます。それを踏まえてタスクフォースメンバーが再び招集され、より詳細な計画作りを行うことになります。

詳しくは、関連文書1関連文書2をご覧ください。
IHPおよびIHP第7期(IHP VII)については、京都大学の宝先生がHydroメーリングリストに流された以下の情報をご参照ください。


ユネスコ国際水文学計画(IHP)は、ユネスコの国際水科学事業であり、名称は「水文」という言葉が含まれておりますが、あらゆる水分野が参画可能です。

我が国では、文部科学省国際統括官付ユネスコ担当係が、政府の対応窓口となっております。

最近の大きな動きとしては、第3回世界水フォーラムでの提案を受けて、独立行政法人 土木研究所には、日本で初めてのユネスコ水研究センターが2005年に創設されようとしております。

現在、IHP第6期 (2002-2007) が実施中であり、我が国としては、ユネスコ IHP 東南アジア太平洋地域運営委員会(RSC-SEAP)の枠組みにおいて、Asain Pacific FRIEND (アジア太平洋 FRIEND、国際観測実験流域データネットワーク流況評価研究事業)や、IHP研修コース(名古屋大学)、河川カタログの編集・出版、HELP(環境・生命・政策のための水文学)などを実施しております。

また、ユネスコの政府間理事会でも決議案として裏書きしている国際水文科学協会(IAHS)との共同研究PUB(観測不足流域における予測)にも参画しています。

ユネスコIHP第7期 (2008-2014)はまだまだ先のような感じはしますが、今からしっかり計画を立てていけば、我々がその時期にやりたいと思う研究をユネスコという枠組みを活用しつつ、各国と共同で推進できることになります。

2月上旬には、日本の回答をとりまとめ文部科学省国際統括官付ユネスコ係(ユネスコ国内委員会自然科学小委員会IHP分科会、竹内邦良主査)を通じて、ユネスコIHP事務局に投げ返す予定としております。

6月に政府間理事会がパリ・ユネスコ本部でありますので、そのときからIHP第7期 (2008-2014)の準備が始まるはずです。


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