これまでの研究成果 |
<概要> 21世紀は水を巡る戦争が起きるだろうといわれている。水危機は「緑の革命」のような農薬、肥料等の科学技術だけで克服できるものではなく、土地利用、生態系、社会・政治システム、人間の心のあり方を含めた水の合理的・合倫理的な分配・利用を実現する、従来の水管理とは質的に異なる新たな水のガバナンスの構築=「青の革命」が必要不可欠である。「青の革命」の実現のためには、水に関する人文・社会科学や自然科学を現場の文脈に沿って学融合的に結集・再編していくことが必要である。 本研究グループでは日本国内および海外の具体的な水系の諸問題における紛争や住民参加の事例研究を通じて、「青の革命」の実現に寄与しうる問題解決型の学術の結集・再編を進め、そのことにより国内や世界の水問題の実態と本質を把握し、問題の解決に寄与するための学術のあり方を示すと同時に、「青の革命」に関する社会提言を通じて水問題の解決に具体的に貢献していくことを目的としている。これまで17回の研究会、シンポジウム等を開催し、成果を冊子にまとめ、様々な方法で社会提言を行ってきた。 <学際性について> 「青の革命」研究グループは、法学、政治学、財政学、経済学、社会学、教育学、国際関係・国際協力論、理学、農学、工学、環境学等の研究者および大学院生が中核となっており、既存学問分野間の壁を越えた学際的・学融合的な議論を実現している。それ以外にも、国や地方自治体の職員、公益・特殊・独立行政法人の職員、民間企業社員、NPO等市民団体メンバーをはじめ、議員、弁護士、ジャーナリストなどが参加しており、非常に多岐にわたるメンバー構成となっている。 また、本事業の目的である学際・学融合を実現する場として、地域を限定した学術の結集が重要であるとの観点から、対象地域を不知火海・球磨川流域圏に定め、「不知火海・球磨川流域圏学会」を地元研究者等と共同で2005年10月に設立した。2006年5月に第1回総会・研究発表会を開催し、学際・学融合的な研究成果の発表や研究者等の交流が行われた。 <社会提言について> 2005年度に行った「流域委員会プロジェクト」の成果を踏まえ、吉野川水系流域委員会新規設置に際して全12ページの提言を策定し、行政(国土交通省四国地方整備局、四国4県の知事)および市民グループ(吉野川みんなの会)に対して1月20日に提言を提出した。関係者に広く周知するため同日に記者会見を行い、2局のテレビニュースで放映されるとともに、翌朝の3紙に掲載された。 この提言は社会的手続きという可変性の高い部分について、全国で現実に展開されている「優良事例」の網羅的調査を踏まえ、より実践されやすい形で策定しているところに特徴があり、これまで自然保護運動やダム反対運動の中で提出されてきた、理想論に傾倒し実効性に疑問のある従来型「意見書」とは一線を画している。 <人材育成について> 「青の革命」研究グループではこれまで、若手研究者として、五名美江(2004年11月〜2005年3月)、山口裕美(2005年4月)、鳥羽妙(2005年4〜11月)、溝口隼平(2006年4月〜現在)の4名を雇用し、代表のもとで研究に従事した。 「青の革命」研究グループのメーリングリストには少なくとも28人の学部生・大学院生がメンバーとして参加している。例えば2006年5月27−28日、東大五月祭の企画として行われた「東大水研究者シンポジウム」において、本研究グループの大学院生が中心となったグループが「青の革命」研究グループ「流域委員会プロジェクト」についてポスター発表を行った。 各研究班においても若手研究者が主要メンバーとして入っている。例えば2005年度の「流域委員会プロジェクト」(現在は研究班1、流域委員会班)に参加し「青の革命」シリーズNo.4「流域委員会」を執筆した12名のうち、8名が大学院生及び学部生となっている。 ●研究会の開催 第1回 (2004年2月16日東京)14名 第2回 (2004年3月12日東京)13名 第3回 (2004年5月29日土佐山田)17名 第4回 (2004年8月27日東京)20名 第5回 (2004年11月19日東京)16名 第6回 (2005年2月10日東京)13名 第7回 (2005年10月15日名古屋)16名 第8回 (2005年10月24日東京)16名 第9回 (2005年11月20日豊田)38名 第10回 (2005年12月2日大阪)95名 第11回 (2005年12月26日京都)45名 第12回 (2006年3月3日東京)29名 第13回 (2006年5月13日人吉)30名 第14回 (2006年6月19日東京)18名※共催(アジア経済研究所「流域のサステイナブル・ガバナンス」研究会) 第15回 (2006年9月2日徳島)49名 第16回 (2006年11月2日東京)25名※共催(オーフスネット、第二東京弁護士会「環境法研究会」) 第17回 (2006年3月3日豊田)76名※共催(矢作川21) 延べ530名参加 ●国際シンポジウム・講演会 ○イアン・カルダー先生講演会 2004年9月9日東京、約30名、主催 ○学際ワークショップ「北タイ・ピン川上流における森林・村落・水のマルチスケール・ガバナンス」 2005年3月7−9日、タイ・チェンマイ、44名、主催 ○国際シンポジウム「ワイルドサーモンと天然アユ−回遊魚を守るということ」 2006年5月6日名古屋、51名、後援 ○「アジア太平洋水文水資源協会」第3回国際会議特別セッション「森林水文学と統合的流域管理」 2006年10月16日、タイ・バンコク、約100名、英国人研究者と共同開催 ○「水のグローバルガバナンス」 2007年2月27日、東京都、約40名、「水のグローバル・ガバナンス」プロジェクトの枠組みで実施されている 「越境影響評価と水のガバナンス」および「青の革命と水のガバナンス」グループが連携して主催 述べ約260名参加 ●国内シンポジウム・ワークショップ ○シンポジウム「緑のダム研究の現状と将来展望」 2004年1月31−2月1日、愛知県瀬戸市、217名 ○シンポジウム「緑のダム研究の最前線と市民・行政・研究者の協働」 2006年1月28−29日、愛知県瀬戸市、227名、共催 ○「森林認証、地域材認証と森林管理、木材利用」 2006年4月20日、愛知県瀬戸市、80名、東京大学愛知演習林と共同開催 ○「森林認証・地域材認証と森林管理・木材利用に関するワークショップ」 2006年4月21−22日、愛知県瀬戸市、80名、共催 延べ604名参加 ●国内集会 ○「第1回森の健康診断全国会議」 2007年1月13〜14日、愛知県豊田市、210名 矢作川森の健康診断実行委員会・伊勢・三河湾流域ネットワークと共同開催 |