豊川水源基金

1:基金設立の背景と目的

 ○ 水源林地域対策の必要性
    
     森林の水源涵養機能は、治水及び水資源の観点から極めて大きな効果を果たしてきている。
    この森林の公益的機能を維持増大するためには、国・県の林業行政によって健全な活力ある
    森林を造成していくことが必要であるが、なお一層の充実が期待されている。
     したがって、これら現行制度を補完するためには、地域の受益を勘案し、上下流地域が連帯
    して対応していくことが必要となっている。

 ○ 水源地域対策の必要性
   
     ダム建設による水没に伴って、生活の基盤を失うこととなる者に対しては、起業者からの補償
    や水源地域対策特別措置法において地域対策がなされる。しかしながら、水没関係者にとって
    最も重要かつ切実な問題である水没後の宅地、農地の取得、住宅の確保や生活の場が変わる
    ことに伴い必要となる職業転換のための措置、高齢者のための対策などについては、十分補償
    されているとはいえない。
     したがって、これを補完し、しかもこうした手当が受益者である下流地域の理解と協力のもとに
    すすめられる必要がある。

 ○ 上下流地域の連帯の必要性
     
     上流の森林地域は、山を治め、水を育み、水質を守る等、広範な公益的機能を果たしている。 
    また、下流地域において営まれる生活や産業活動は、水の大きな恩恵をうけ、その生産活動の
    成果を上流地域に及ぼしている。このような関係のもとに、上下流地域は相互依存の形で結ば
    れているが、地域相互間に不平等感があることもまた否めない事実である。こうした意識の是正
    のためにも、上下流地域が一体となって共通する問題に対処することが望まれている。
 

 :基金設立の経緯
 
 ○ 地域共同体の構想が東三河の民間研究団体から提言され、地域において次第に気運が醸成さ
   れつつあった。(1974〜1975年)

 ○ 県議会において、水源開発問題と関連して、水源地域対策と森林の水源涵養機能の育成の必要
   性について議論がなされた。(1976〜1977年)

 ○ 愛知県地方計画(1976〜1985年)において、計画の背景の1つとして流域共同体への方向が示
   され、水源地域対策と合わせて森林の公益的機能の育成にも配慮した水源基金の制度を下流受
   益者の協力のもとに設置する計画が出された。(1976年3月)

 ○ このような経緯を受けて、県は1976年4月から企画部を中心として関係各部と検討を進め、同年  
   10月基本的な構想試案を作成し、関係市町村と協議を進めた。

 ○ 県の試案を受けて、関係市町村は、各市町村内の調整を進めるとともに、関係市町村相互の連携  
   を図り、県と共同で水源基金を設置する体制が整えられた。

 ○ 1977年11月に至り、設立者会議を開催する運びとなった。


                   ((財)豊川水源基金の見直しに関する報告書、2002年5月24日より)