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イアン・カルダー先生講演記録2004989日)

講演者:イアン・カルダー(イギリス・ニューキャッスル大学土地利用水資源研究センター長)
講演タイトル:"Forests and Water -Reconciling public and science perceptions"

 

 イギリス・ニューキャッスル大学土地利用水資源研究センター長であり,「The Blue Revolution」の著者であるイアン・カルダー先生が20049711日に来日され,以下の2回のご講演されました.

青の革命とは何か?,イギリスではどのようなことが実践されているのか?,を知る良い機会となりました.

 以下に講演された日程と発表資料,要旨和訳を展示します.

 

■講演1:国際シンポジウム

「水のグローバルガバナンス ― 人間安全保障の視点から ―」

日時:  200498日(水)午前10時から午後5時半まで

会場:  東京・渋谷 UNハウス(国連大学本部) ウ・タント国際会議場(3F

 

■講演2:東京大学森林科学セミナー

日時: 200499日(木)14:00〜16:00

会場: 東京大学山上会館大会議室(本郷)

 

■資料: 発表資料 一種(全て同じものです)

     「forests water : Forest, Land & Water - Improving Outcomes

PDF形式,一括(3.5MB

PDF形式,4ページに分割

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・ファイル分割結合フリーソフト「みやぶん太」にて4分割.

5ファイル全てDLし,みやぶん太で結合してください.

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    Macの方など,ダウンロードが上手くいかない方は管理人までメールを下さい.

 

■発表要旨和訳:

現在,世界中で水の変動を平準化し,環境を改善し貧困層の生活を向上させることを目的に,森林,土地,そして水に関する政策ツールが構築されつつある.しかし残念なことに,途上国開発プログラムの枠組みでのこういった政策の実施は,その目的とは逆の結果を生みだしている.

 普通,途上国における森林や土地,水管理の政策は,貧困層が最大限の利益を享受できるようにすることを目的に掲げているが,それら政策の施行が,受益者であるはずの貧困層の水の利用に与える影響については注意を払っていないことが多い.その結果,流域開発や二酸化炭素吸収量増加を目的とする開発プログラムの一環として行われた土地利用改革が,社会的に脆弱なグループの水へのアクセスを制約してしまう場合がある.水がはじめから不足している乾燥地では,生活の基本的ニーズ(BHN:基礎生活分野)を満たすだけの水が貧困層に供給されていないにもかかわらず,良質の水が灌漑や林業などの生産活動にのみ投入されている,という状況も珍しくはないのである.

 中国では「傾斜地転換プログラム(Sloping Lands Conversion Programme)」のもと,そしてインドでは「流域開発事業(Watershed Development Projects)」などによって,大規模な植林を展開している.その他多くの国でも,「環境サービスへ対価(Payments for Environmental Services)」や「クリーン開発メカニズム(CleanDevelopment Mechanism)」スキームなどのもと,植林活動が進められている.対照的に,南アフリカ共和国では,図2に示すように,「ワーキング・フォー・ウォーター」プログラム(Working for Water Programme),「流出水量削減活動(StreamFlow Reduction Activity)」,「公平な分配(Allocation Equity)」,そして「グリーン・ウォーター(Green Water)」などと命名されたスキームのもと,土地利用変化による悪影響(しばしば早生樹種の植林を伴う)を緩和する活動が展開されている.開発プログラムは,適切に実施されれば多大な利益をもたらすものであっても,そのプログラムによる介入(活動方針・内容)が完全に善なるものであるという思いこみに基づいて独断的に計画された事業は,非常にしばしば,社会の貧困層や環境の持続性を犠牲にし,一部のエリート層にのみ利益をもたらすような結果をもたらしているのである.

 貧困層がもっとも苦しむことになる一番の影響は,水へのアクセスの制約である.貧困層や社会的弱者に対する安全な水の供給を確保し,またその他「ミレニアム開発目標」に掲げられた目標を達成するためには,土地利用と水資源開発計画・管理のための統合的なアプローチが求められる.そのようなアプローチは,潜在的な受益者を含むすべての利害関係者間の対話,確固とした管理原則そして信頼できる科学的データに基づいて構築されるべきである.

 この講演では,現在進行中の様々な流域開発事業による社会的影響や問題を検討する.また,研究者と行政の間の溝を埋め,「グリーン・ウォーター」や「公平の分配」といった概念を取り入れた新たな政策構築を視野にいれた,「青の革命(BlueRevolution)」の推進を提唱する.

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©2004. Research Project on Global Governance of Water.