青の革命と水のガバナンス研究グループ

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4 長野県「森林と水プロジェクト」活動報告
投稿1  2005/9/11(日) 午前 8:11
 コメント 1
  
投稿1 蔵治光一郎 2005/9/11(日) 午前 8:11

投稿1 蔵治光一郎  
蔵治@研究グループ長です。
9月10日に松本市南部公民館にて、2000年12月より長野県林務部が行っている「森林と水プロジェクト」の活動報告会が行われたので、参加してきました。この報告会は「県政出前講座」という位置付けで、松本の「水と緑の会」という団体が主催したものです。参加者は60人ほどでしたが、主催者は「こんなにたくさんの方が来るとは予想していなかった」と繰り返しおっしゃいました。県外からの方もかなりいたようです。
発表は、松本地方事務書の加藤英郎さんでした。蔵治・保屋野編「緑のダム」にも論文を書いていただいている方です。発表は4つの内容を含んでおり、1.第一次報告について、2.プロジェクトの課題、3.河川への流出に対する森林の関与、4.吉野川の研究との比較、でした。パワーポイントを駆使して1時間半ほど話されましたが、とても分かりやすかったと思います。
1.第一次報告については以下に公開されています。
http://www.pref.nagano.jp/rinmu/sinrin/mizugaiyou.html(注:その後、当アドレスはリンク切れになりました。同内容は書籍「緑のダム」資料編のところに収録されています)
また、3.については、「緑のダム」に書いて頂いた内容をご参照下さい。
主催者からの案内には、「長野県の9流域協議会で『基本高水の見なおしが必要である』との意見が多くあり、県もその方向で動き始めています。森林効果が基本高水流量の見なおしに寄与していけるのか?森林効果の数値化が実現するのか関心のあるところです。」と記されていました。4.に吉野川との比較が入ったのは、吉野川では森林の機能と基本高水を結びつけることに成功しているからでしょう。吉野川のやり方にはまだいろいろ問題が多いのではないかという指摘がされていましたが、長野県では「緑のダム」以降、全く先に進んでいないこともわかりました。森林部局単独ではこれ以上できない、土木・河川部局との連携が必要だが実現していない、ということでした。吉野川のように住民主体の活動とは違い行政主体ですと、このような縦割り問題が立ちふさがってしまうという典型のように思われました。今後の課題があるとすれば、それが最大の課題であるように思われました。
長野県では「高水協議会」を発足させ、9月13日に第1回協議会を開催します。
http://www.pref.nagano.jp/keiei/chisui/happyou/0830takamizu.pdf
この協議会は行政主導ではなく住民が主体となっていることが特徴で、専門家すら入っていません。専門家抜きで基本高水を議論するというのは全国的に例がなく、どのような方法が議論されるのか注目されます。加藤さんは「協議会には、森林部局としても関与しなくてはいけない」とおっしゃっていましたが、それが可能なのかどうか、まだ見えていません。
最後に、加藤さんは「例えば多摩川では、基本高水は決めてもそれを使わず、目標流量っていうのを定めて計画しているんですよね。そういう方法もあるのに、基本高水にこだわりつづける必要があるのかどうか?」ともおっしゃっていました。現実的な対応としては賢い方法でしょうが、本質的な問題解決には、やはり武庫川で議論されているように、「基本高水の決め方に透明性を確保する」ことが大事であろうと思いました。
なお、この「森林と水プロジェクト」の出前講座は9月14日にも茅野市役所で行われるようです。興味のある方はご参加ください。
コメント1
加藤さんからコメントを頂きましたので転載します。 蔵治 様 10日は遠路お出向きいただきありがとうございました。 まさか蔵治さんがお見えとは知らず、本当にびっくりしました。わざわざ田舎の勉強会に! 以下に、少し長くなりますが、蔵治さんのレポートに対するコメントを記します。 最初に、「吉野川との比較」は主催者のリクエストだったものですから、僭越とは思ったのですが、私見という形で自分が理解したこと、感じたことを発表させてもらいました。的外れだったでしょうか?御見解いただければ幸いです。
次に、基本高水協議会についてですが、協議会は公募による行政外部の組織であり、リクエストがあれば別ですが、基本的には林務部が関与しうるものではありません。私たちのプロジェクトが今後基本高水の検討を続けるためには、土木部との協働が不可欠というのが私の主張です。
最後に、この会の終了後、私が蔵治さんに多摩川の例を持ち出したのは、基本高水に拘らなくてもよいと考えたからではなく、河川整備計画において基本高水がどのように取り扱われるのかという全体的な構図の中で、基本高水の決定過程を相対的に捉えた上で議論する必要があるのではないかと思ったからです。 コメントは以上です。今後ともよろしくお願いします。

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