日本鳥学会2010年度大会 自由集会企画 (Sep. 14, 2010)

W03 ルリカケスから、陸生希少鳥類個体群の保全を考える

(世話人:石田 健・西海 功・村田 浩一)

 ルリカケスは、以前は特殊鳥類、1993年施行の「絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律(種の保存法)」では国内希少野生動植物種に指定されていた。2008年に、環境省による同法見直しにおいて国内希少野生動植物種から除外された。同法では、初の事例であった。絶滅危惧種法の精神は、指定種の、絶滅に瀕した状態から絶滅を危惧しなくてよい状態への回復をはかることなので、このことは喜ぶべきことである。

 ただし、ルリカケスの事例は、研究者、行政担当者、市民活動家のそれぞれにとって多くの課題も残している。それらの課題について整理し、検証を続けることは、ルリカケスが再び絶滅危惧種に戻ってしまわないよう見守る上でも、残された希少動植物、特に、森林に生息する動植物個体群の保全上も意義があると期待される。

 本集会では、6人の研究者、行政担当者、市民活動家が、生態、遺伝、疾病、域外保全、法律の運用、市民の目など多方面からルリカケスの特徴と課題を紹介する。また、奄美大島の固有種であるルリカケスにおけるそれらの課題を検証することが、希少種個体群の保全モデルとして一般化できるか、総合的に議論する。参加者とともに、展望をなるべく多く共有することもめざす。

講演題目と演者

・ 生態学からみたルリカケスとその保全     石田 健 (東京大学)

・ 遺伝子からみたルリカケスとその保全     西海 功 (国立科学博物館)

・ 野生動物の疾病とルリカケスの保全      村田浩一 (日本大学)

・ 動物園とルリカケスの域外保全事業      高橋幸裕 (上野動物園)

・ 種の保存法からみたルリカケス        大林圭司 (環境省)

・ 奄美島民にとってのルリカケス        鳥飼久裕 (奄美野鳥の会)

    その他、コメント。ルリカケスの行動学等。

・ 奄美島民にとってのルリカケス        鳥飼久裕 (奄美野鳥の会)

                   (実際の講演順は、入れ替わる可能性があります。)

・ 総合討論・ルリカケスと日本の希少鳥類の将来

世話人代表連絡先:石田 健  e-mail: ishiken@es.a.u-tokyo.ac.jp

〒113-8657 東京都文京区弥生1-1-1 東京大学大学院農学生命科学研究科

電話 03-5841-5499 Fax 03-5841-0827

・ルリカケスの情報を以下のウェブページに掲載してある。集会までに、この集会のテーマに関連する情報を加えていく予定です。

アクセス
http://www.sci.toho-u.ac.jp/accessmap/index.html
会場の位置
http://map.yahoo.co.jp/pl?type=scroll&lat=35.69378969017982&lon=140.04865520017054&z=18&mode=map&pointer=off&datum=wgs&fa=ks&home=on&hlat=35.694299421841265&hlon=140.04993193166175&layout=&ei=utf-8&p=%E8%88%B9%E6%A9%8B%E5%B8%82%20%E6%9D%B1%E9%82%A6%E5%A4%A7%E5%AD%A6

大会のホームページ(要旨集のpdf取得など)
http://www.lab.toho-u.ac.jp/sci/gakkai/osj2010/index.html

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石田の講演(紹介)内容から

歴史 記念種はヒマラヤ山地のドングリ帯に。1万年余り前の化石(近縁種?)が沖縄本当から出土している。19世紀末に西洋婦人の帽子羽飾り(青が流行ったとの記述もwebにあり)用に多数捕獲され、輸出されて減った。天然記念物に指定されて保護。環境庁の発足後、特殊鳥類。1993年絶滅危惧種法、指定。2008年、解除。マングース防除事業が実施されている。

生態 協同繁殖する(ヘルパーがいる)。他の奄美の鳥類に比べても、早い繁殖期。少ない一腹卵数(3?4が再頻値)、非同時孵化、餓死?していくヒナ、高い被捕食率、たぶん長い一生(繁殖個体(成鳥)の高い生存率、未確認。)。スダジイやアマミアラカシの貯食、ドングリに依存した繁殖成績、個体群変動。民家等での繁殖。
  研究上の利点(advantage)、長期間、intensiveな研究が行われている大陸種のフロリダヤブカケスとシベリアヤブカケスの研究成果が参照できる。亜熱帯、島嶼固有種で、種の全個体を研究対象にできる。複数の島に生息する。目立つ、島民にとって身近。巣箱を利用する。など。
  不利点(handicap) 見つけづらいく、近づきづらい自然巣。成鳥の捕獲技術が未確立。高い交通費(飛行機)。ハブ(ルリカケスの巣にもときどきいる)。複雑な地形、深い森林。など(今回は、余り紹介しません。)

今後の課題:多数個体への標識。長期継続モニタリング。加計呂麻島(巣箱設置準備中)、請島集団の継続調査。MHCやゲノム解析、病理解析、野外内分泌学的研究など、広く、深い研究を進展させる。社会学的考察、天然記念物や条例などを含めた合意形成、市民意識の喚起、生物多様性における解釈など。(これは、総合討論の中で、他の発表やコメントを勘案して、とりあえずの方向性として一部を例示するつもり。)

以上