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研究

中国における森林の所有・経営形態

陳 鍾善(研究部 農学特定研究員)
2008年6月1日

研究内容 


 中国では近年,経済の発展や人口の増加に伴う自然環境の悪化,木材需給の不均衡が深刻となっています。森林資源量が著しく不足してきたため,政府は天然林資源を保護し人工林育成を推進すると同時に,木材生産の場を従来の天然林から人工林へ移し,森林管理においてもこれまでの国家主導を改め,社会各層からの森林・林業経営への参入を積極的に推進する政策をとっています[1] 。その中でまずもっとも基本的な森林の所有・経営形態を明らかにする必要性があると思います。

 中国における森林の所有・経営形態を見てみますと,中国の「憲法」では「森林,鉱山,草原,荒地などの自然資源は国家所有とする。ただし法律規定によって集体(1)所有とされたものを除く。」と規定され,また「森林法」でも「森林資源は国家所有とする。ただし法律規定によって集体所有とされたものを除く。」と規定されています。すなわち,中国の森林は一部の集体所有林を除いてすべて国有であり,所有制度において「私有林」は存在しません。

 その一方で,同じ「森林法」に「個人には森林,林地の所有権はないが,林木の所有権,林地の使用権はある」とも規定されています[2] 。つまり中国の所有制度のもとでは森林所有者と森林経営者が完全に同じものではなく,「私有林」は存在しないが森林の経営形態には国家,集体,個人の三者が存在します。中国ではむしろ使用権原によって森林が国有林と集体有林,個人有林に大別されるのです。このため中国では近年,国家および集体が行う活動を「公有林業」,そのほかのものが行う活動を「非公有林業」と呼んで区別しています。また中国の森林は林地の使用権によって,国有林のうちさらに森林の所有権が中央政府にある森林を中央国有林,所有権が地方政府にある森林を地方国有林と呼んでいます(図)。管理機関として中央国有林には「森工企業」(2),地方国有林には「国有林場」(3)が置かれています。

 このように中国における森林の所有・経営形態にはさまざまなケースが存在してきており,比較的に単一な森林の所有・経営形態から多様な所有・経営形態に移行する中では多くの課題を抱えることになります。

〔用語解説〕

(1)「集体」は資産を労働者全体で所有し,共同で労働作業にあたり,労働に基づいて利益の配分を行う社会主義経済組織のことであり,主に村を指すことが多いです。

 (2:主に天然林の開発を目的に設立され,木材の生産を中心に行うと同時に,多角経営(農業,商業等),更新,造林を行いつつ,企業経営としての独立採算制をとっているため「森工企業」と呼ばれています。吉林省の場合,森工企業数は17であり,1企業当りの経営面積は,約18万6,000ha,労働者数は5,223人です(2004年現在)。

(3)森工企業に比べて規模が小さく,比較的散在している天然林,二次林を中心に設立し,主に森林の育成(撫育,造林)を行っています。1994年までは予算制を採っていましたが,1995年からは独立採算制を採っています。吉林省の場合,国有林場数は301であり,1林場当たりの経営面積は約1万ha,労働者数は183人で(2004年現在),森工企業より規模が小さく,1つの集落を形成しています。

 

図表


2008060111.jpg
 中国における森林・林業の所有,経営形態と管理主体の関係

 

参考文献


[1] 周生2008060112.jpg(2002)中国可持続発展林業戦略研究調研報告(上).227pp,中国林業出版社,北京.

[2] 張力(2003)林業政策与法規.372pp,中国林業出版社,北京.