1. HOME
  2. 研究
  3. 研究トピックス
  4. 森林域における水循環研究

研究

森林域における水循環研究

愛知演習林 助教授 芝野 博文

2005年7月8日

 ヒマラヤを源流とするアジアの主要河川(黄河や長江からインダス河まで)では温暖化に起因した氷河の後退により発生する洪水が問題となっています。しかし、真に重大な問題はその状態が数十年継続した後に氷河に貯留されている膨大な水が消費され逆に大きな渇水が発生することが予測されていることです。人口が稠密で経済活動が活発な地域を流れ下る河川ですから極めて深刻な問題をはらんでいます。21世紀は、逼迫する水資源をめぐって水問題がクローズアップされることはいうまでもありません。豊かな降水と森林に恵まれた日本は質的に優れ量的に豊富な水資源を保全しておくことが可能であり、水が重要な輸出品目となる可能性さえ秘めています。国内に目を向けると、上流から下流まで防災上の対策を講じ稠密な水利用のシステムを作り上げたことから、流域や河川が過去に持っていた豊かな生態系が変質しました。

 さて、山地源流部は森林地帯となっていて、大学の演習林には量水観測施設(1)で流量を観測しているところが随所にあります。長期にわたって精密な量水観測結果が得られる愛知演習林の場合ですと、荒廃した森林から現在の里山の景観を有する森林へと成長していく過程にあり林分の構成もアカマツからコナラを主体とする森林へと変貌しています。そこで、年間の水収支から蒸発散量が減少しているのではないかという結果や一降雨による水流出の応答関係から流出が極めてマイルドになっていること、無降雨日流量の低減の様子などから流域が水を蓄えて徐々に放出する機能が向上していることなどが、様々な分析をとおして明らかになってきました。また、土砂流出の観測や分析を行っています。

 以上の研究テーマは、世界が求めている大きな課題に答えるには弱いと感ずる方も多いと思います。私は、大学演習林の水循環研究は、撹乱の程度が軽微な自然生態系で構成された流域において生起しているあらゆる現象を明らかにしていくことだと感じています。一方で、グローバルな水資源利用の枠組みにも配慮しながら研究の方向を定めつつ信頼性の高いデータを積み重ね、広範な視点をもって研究を行うことが大切であると思います。

<参考文献>

[1] Krishna. B. KARKI and Hirofumi SHIBANO: Characteristics of forested watershed underlain by weathered-granite through observation of sediment yield and its transportation capacity calculated using hydrograph and sediment rating curve. JSECE (submitted in 2005),

[2] Junji SHIMOKURA & Hirofumi SHIBANO: Effects of forest restoration in mountainous basins on long-term change in baseflow recession constants. Water Resources Systems - Hydrological Risk, Management and Development (Proceedings of symposium HS02b held during IUGG2003 at Sapporo, July 2003), IAHS Publ. No. 281,133-140, 2003

[3] Craig Simons: Beware of Falling Ice. NEWSWEEK 74-76, JUNE 6/ JUNE 13, 2005

<用語解説>

(1) 量水観測施設:渓流の流量を計測するためのダム・貯水池・ノッチを備えた施設であり、水位計で水位観測を行って時間単位・日単位の流量を水高(mm/hour or day)で表現する。