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研究

北欧における持続可能な林業の取り組み

尾張 敏章(森林流域管理学研究室/北海道演習林 講師)
2007年2月1日

研究内容 


日本、特に北海道における林業の将来展望を描く上で、林業先進国として知られる北欧(スウェーデン、フィンランド)の経験から学ぶべきことは多いでしょう。筆者は1995年以降、現地での調査を継続して行い、北欧における持続可能な林業の実際をさまざまな側面から明らかにしています。

北欧では早くから作業の機械化が進み、労働生産性の大幅な向上と低コスト化を実現しました。北欧の伐出作業は、短幹集材システム(Cut-to-Length Method)という方法で行われています。この作業システムでは、ハーベスタとフォワーダ<1>の2種類の林業機械が用いられます。作業ではまず、ハーベスタが立木の伐倒から枝払い、玉切りまでの工程を一度に行います。つづいて、フォワーダが林内に残された丸太を荷台に積み込み、林道端へと運搬します。スウェーデンの調査事例では、機械の生産性はどちらも1時間当たり16~17m3、年間稼働時間は2,300~3,000時間でした。このようにきわめて高い生産性と稼働率によって、生産コストを1,000~1,800円/m3にまで低減することに成功しています。

北欧はまた、木材生産の保続に加えて生物多様性や地域社会の維持・発展を考慮した「持続可能な森林経営」を世界に先駆けて導入した地域でもあります。スウェーデンでは、持続可能な森林経営を第三者機関が評価する森林認証制度の国内認証基準により、生産林の5%以上の林地を伐採せず保存しなければなりません。貴重な動植物の生息地や湿潤地、広葉樹や若齢木の多い林分が伐採対象から除外されます<2>。伐採対象地であっても、太い木や広葉樹などは極力伐らずに残されます。また、枯れて間もない樹木に生息する昆虫に配慮して、数本の林木を地上2~3mの高さで伐採したり、1haあたり3m3を上限に倒木を林内に残したりします。さらに、過去に人が住んでいたことを示す石垣などは、文化的価値が高い場所として保護されます。

 

図表


2007020103.jpg
<1> ハーベスタ(左)とフォワーダ

2007020104.jpg
<2> 伐採対象から除外された湿潤地

 

参考文献


[1] 尾張敏章(2003)欧州主産地の資源状況と素材生産.『欧州材の輸入と三大産地国の実態-フィンランド・スウェーデン・オーストリア-』(林政総研レポート64),47-80,(財)林政総合調査研究所,東京

[2] 尾張敏章(2005)スウェーデンにおける持続的森林管理と森林認証.石井寛・神沼公三郎編『ヨーロッパの森林管理-国を超えて・自立する地域へ-』,285-306,日本林業調査会,東京

[3] 尾張敏章(2005)森林作業と林業機械について知る.中村太士・小池孝良編『森林の科学-森林生態系科学入門-』,178-181,朝倉書店,東京