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研究

伊勢湾台風後の風倒木除去は森林の炭素蓄積を半減させていた!

鈴木 智之(森林圏生態学研究室/秩父演習林 助教)
2014年12月18日


研究内容

森林では、風などが原因で倒木が生じます。倒木はすぐには分解されず、非常に長い時間をかけて分解されます。このような分解過程の倒木は、様々な動物や菌類・微生物の生息地・資源となると同時に、一部の植物にとっては定着するための適地にもなっています。また、長い時間森林の中に残っていることで、森林の炭素蓄積の一部を構成しています。このように倒木は生態系の中の重要な機能を担っています。

1959年9月、中部地方を猛烈な勢力かつ非常に大きな台風、通称伊勢湾台風が通過し、中部地方の森林の多くの場所で大規模な風倒が起こりました。その後、風倒のあったほとんどの場所で風倒木が搬出されました。これは大規模に発生した倒木を木材として利用する目的や病虫害の発生源にならないようにするためであり、大規模な風倒地では一般的に行われる施業です(Salvage loggingなどと言われます)。しかし、このような風倒後の倒木除去は、倒木の担っている生態系の機能を著しく低下させるおそれがあります。

この研究では、伊勢湾台風によって大規模な風倒があった場所、さらにその後風倒木の搬出が行われた場所を空中写真と現地踏査によって判別した上で、それぞれの場所に複数の調査区を設置し、現在生きている樹木および風倒木の調査を行いました。その結果、風倒から55年が経過した2014年現在でも、倒木の量には倒木を除去した場所としてない場所で倒木量に非常に大きな違いがありました(図1)。倒木を除去しなかった場所では50-230 t/ha(推定乾重量)の倒木があったのに対して、倒木を除去した場所では、10-30 t/ha程度の倒木しかありませんでした(一般に乾重量のほぼ半分が炭素とされています)。生きている樹木の量はどちらも100-200 t/haほどでした。つまり、風倒を除去していない場所では、生きている樹木とほぼ同量の炭素が倒木として蓄積されていたのに対し、倒木を除去した場所ではその倒木がほとんどない状態になっていました。

現在、大気中の二酸化炭素濃度上昇の抑制のために、森林の炭素蓄積機能を最大化するような森林管理が必要となってきています。また、将来的には、気候変動の影響で伊勢湾台風級の台風の襲来頻度が増える可能性も懸念されています。このような状況下で、森林の炭素蓄積機能を有効に活かすために、大規模風倒によって生じた倒木をどのように管理するかを考えることが重要だと言えます。


図表

fig1_Suzuki.gif
図1 風倒木放置区(4区)と除去区(4区)の風倒の量
ひとつのバーがひとつの調査区を示す.調査区(20×20m)当たりの倒木をヘクタール(ha)あたりに換算.


発表文献

上記結果については今後発表予定(2014年12月現在)

以下、関連論文
Suzuki SN, Kachi N, Suzuki J-I (2008) Development of a local size hierarchy causes regular spacing of trees in an even-aged Abies forest: analyses using spatial autocorrelation and the mark correlation function. Annals of Botany, 102, 435–441.
Suzuki SN, Kachi N, Suzuki J-I (2013) Spatial variation of local stand structure in an Abies forest, 45 years after a large disturbance by the Isewan typhoon. Journal of Forest Research, 18, 139–148.