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研究

自然アクセス権の動態をさぐる

齋藤 暖生(森林圏生態社会学研究室/富士癒しの森研究所 助教)
2014年6月2日


研究内容

仮に森や野原などの土地を所有していなくても、一般の人々がその中を歩いたり、キノコなどちょっとした恵みを得たりする権利を、自然アクセス権と呼ぶことにしています。どの国や地域にも、基本的に土地(あるいは水面)には所有者がいますが、自然アクセス権がどこまで認められるのかは、国や地域によって大きな違いがあります。ミレニアム生態系アセスメントによって、生態系サービスの低下が懸念されるようになりました。この懸念は、自然環境の質あるいは量の低下による評価に基づきますが、一方で、誰がその恩恵に与かれるのかを左右する自然アクセス権も重要な意味を持っていると筆者は考えています。また、人々が自然に親しむことが環境保全につながるという認識から、環境政策として重視している国もあります。

このように、自然アクセス権は人間生活の豊かさと環境保全の両立を図るうえで積極的に評価できる面があるのですが、いっぽうで、土地所有者の権利を過度に侵害しないか、資源の過剰利用を招きはしないか、という懸念があります。つまり、自然アクセス権の設定次第で、いい面が強く出るのか、悪い面が強く出るのか、という葛藤の状況にあるわけです。

日本は、実定法上は土地所有者の権利が強く、自然アクセス権は認められてはいないのですが、各地を調査することで、地域によって様々な実態があることが分かってきました。その一方で、ほぼ例外なく、どの地域でもかつては実態としての自然アクセスが十分に認められていたことも分かってきました。では、どういう事情でどのように自然アクセスが狭められて来たのかというのを、各地の事例から明らかにしていくのが、目下のテーマです。こうして得られる知見から、上記の葛藤を解きほぐすヒントが得られるのではないか、と考えています。


発表文献

齋藤暖生(2009)半栽培とローカル・ルール―きのことつきあう作法―.(半栽培の環境社会学―これからの人と自然―,宮内泰介編『,昭和堂).155-179

嶋田大作・齋藤暖生・三俣学(2010)万人権による自然資源利用―ノルウェー・スウェーデン・フィンランドの事例を基に―.(ローカル・コモンズの可能性,三俣学・菅豊・井上真編著,ミネルヴァ書房).64-86

齋藤暖生(2014)アクセス権と生態系サービスに関する試論.第125回日本森林学会大会学術講演集