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研究

資源回復に向けたエゾマツ苗木生産の新たな取り組み

後藤 晋(森林圏生態学研究室/教育研究センター 准教授)
2014年3月3日


研究内容

エゾマツは「北海道の木」に指定され、北海道のシンボルとして長らく人びとに親しまれてきました。しかし、同じく北海道の針広混交林を代表するトドマツやアカエゾマツとは異なり、その資源量は1950年代から減少し続け、当時の半分程度に落ち込んでいます。減少してきた理由の一つは、過伐や台風被害などの影響で資源が減少しているにもかかわらず、エゾマツの苗木が事業的なレベルで生産されてこなかったことが挙げられます。そこで、平成22~25年に「北海道固有の森林資源再生を目指したエゾマツの早出し健全苗生産システムの確立」というプロジェクトを実施し、エゾマツの資源回復に向けた新たな試みとして、1.播種床での幼苗生産、2.コンテナ苗の生産、3.コンテナ苗の植栽に関わる様々な試験研究を行いました。

1.播種床における幼苗生産
エゾマツは暗色雪腐病、苗立枯病などにかかりやすく、開芽時期が早いために晩霜害に合う危険が高いという特徴があり、播種床における得苗率の低さが事業的な苗木生産を妨げる要因となっていました。そこで、充実種子選別法の開発、春播きによる病害回避、代表的な病害に効く農薬の選別と効果の検証を行い(写真‐1)、播種床での幼苗生産方法を改良しました。

2.コンテナ苗の生産
成長の遅いエゾマツは、種子を播いてから植付けまで6年間もの長い期間がかかり、除草作業など大変な労力を必要とします。そこで、播種床で2年間育てた幼苗をコンテナに移植して、コンテナでさらに2年間育て、播種から4年間で苗木を出荷できる方法を確立しました。コンテナを用いると、病害や気象害に合う危険も小さくなる上に、床替床での除草作業が不要となります。用いるコンテナの種類、さらに成長を促進させるための条件検討、コンテナへの直接播種など、改良すべき点はまだまだありますが、現在の方法では安定したコンテナ苗の生産が可能となりました(写真‐2)。

3.コンテナ苗の植栽
コンテナ苗を実際に植付けた結果、通常の苗(裸苗)に比べて植え付けの効率がよいことが分かりました。しかし、問題は植えたコンテナ苗がきちんと育つかどうかです。このプロジェクトでは、コンテナ苗の育成方法、植栽時期、地がきの強度などを変えて、植栽試験を行いました。植栽からまだ3年しか経過していませんが、今のところコンテナ苗の活着率や初期成長は良好で、順調に生育しています(写真‐3)。また、植栽時期を選ばないというコンテナ苗の利点は、エゾマツでも確認することができました。

以上の成果を「エゾマツ早出し健全苗育成のための手引き」として冊子にまとめました(写真4)。この手引きのPDFは、東京大学リポジトリ<http://hdl.handle.net/2261/55679>からダウンロードできます。また、北海道の林木育種56巻2号は本プロジェクトの特集号となっており(写真‐5)、13篇の論文が掲載されていますので、興味のある方はぜひご覧ください。


図表

140303goto1.JPG写真1 農薬の効果に関する調査

140303goto2.jpg写真2 ハウスで育成中のコンテナ苗

140303goto3.jpg写真3 コンテナ苗の植栽に用いた器具

140303goto4.jpg写真4 エゾマツ早出し健全苗育成のための手引き

140303goto5.jpg写真5 「北海道の林木育種」56巻2号


発表文献

「エゾマツ早出し健全苗」プロジェクトグループ(編)(2014)エゾマツ早出し健全苗育成のための手引き.29pp.<http://hdl.handle.net/2261/55679

北海道林木育種協会発行(2013)「エゾマツ早出し健全苗プロジェクト」特集号.北海道の林木育種56(2):1-38.