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研究

都道府県別「寿命分布」を利用して国全体の伐採量を計算する

広嶋 卓也(森林流域管理学研究室/千葉演習林 講師)
2012年4月3日

研究内容 

一般に国や都道府県といった広い地域で森林の伐採量を予測する場合,個々の森林所有者の伐採傾向を積み上げることは効率的でなく,森林所有者全体の傾向を確率的に取り扱うことが有効です。つまり多数の森林所有者からなる広域の森林を考える場合,ある一定の期間にどの林齢の森林がどれだけの面積,伐採されるかということは確率的に決まるということです。そしてこの確率分布は,横軸に伐採齢(森林が植栽されてから伐採されるまでに経過した年数),縦軸に確率を取れば,ヒト,建物,電球などの寿命と同様にひとつのピークをもった「寿命分布」で模式化できます。さらに寿命分布が将来どのように変化するか予測すれば,将来の伐採面積,ひいては森林面積や森林蓄積量といった森林資源の推移を予測することができます。

寿命分布は,ある一定期間の森林面積や伐採面積の情報から推定することができます。しかし森林や伐採の“面積”に関する情報を都道府県のような広域で収集することは容易でありません(それに対して,伐採された“材積”の情報は市場等を通じて比較的精度よく収集できる)。それゆえ従来,寿命分布を利用して国全体の伐採量を予測する際には,こうした面積情報の充実した,特定の県における伐採傾向を全国にあてはめることが一般的でした。そしてこのことが一因となり,予測した伐採量と現実の伐採量が乖離してしまっていました。

そこで,本研究では,森林や伐採の面積情報が入手できなくとも,森林率,丸太生産量といった入手の容易な統計情報から寿命分布を推定する方法を開発しました。具体的には,はじめに精度の高い伐採情報を有する22道府県について県別の寿命分布を推定しました(図)。つぎにこれら22道府県を寿命分布のパターンに応じて3つのグループに分類し,各グループに属する県の伐採面積と森林面積を合計した上で,グループごとに合成寿命分布を推定しました。つぎにその他の25都府県について森林率,丸太生産量等の統計情報をもとに,さきの3グループに分類しました。そしてはじめの22道府県については各県の伐採情報から推定した寿命分布,あとの25都府県については各県の属するグループに対応した合成寿命分布により伐採面積を計算しました。モデルから計算した伐採面積を伐採材積に換算し,市場から得られた伐採材積の統計資料と比較したところ,両者間の誤差はわずか2.11%に収まりました。

以上,本研究の手法により,伐採面積の情報が整備されていない都道府県でも,寿命分布の推定が可能となりました。そして寿命分布を利用して都道府県レベルの伐採予測を行い,その予測結果を積み上げることにより,国レベルの伐採予測が高い精度で行えるようになりました。

日本は2020年までに木材自給率を50%まで高めるとの目標を掲げています(現状では30%弱)。本研究の手法を活用して,各都道府県でどのような伐採を行えばこの目標が達成できるのか探ってゆきたいと考えています。

 

図表


gentan01.gif

図.22道府県の寿命分布
横軸に伐採齢,縦軸に確率を取ると森林の伐採確率は,ひとつのピークをもった典型的な寿命分布で模式化できます。伐採の傾向に応じて寿命分布は変化します。
グループ1: 北海道,青森,栃木,熊本
グループ2: 宮城,静岡,島根,群馬,徳島,山梨,三重,鹿児島,和歌山
グループ3: 新潟,京都,長崎,奈良,兵庫,愛知,福岡
大分と宮崎はそれぞれ単独グループ

 

発表文献


Hiroshima T (2011) Calculation of yields on a national level by combining yields of each prefecture using the Gentan probability. J For Res 16: 98-107.(平成24年日本森林学会JFR論文賞受賞論文)