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研究

隣の流域で水質・水量が違うのはなぜか?

浅野 友子(森林流域管理学研究室/研究部 講師)
2010年11月18日

研究内容 

地質、地形、植生などの条件が同じでも、流域面積が小さい渓流では渓流によって流れる水の量や質が違うことが明らかになってきましたが、このような小さい渓流での場所による違いはどうして生じるのでしょう?

田上山地での研究の結果、これらの違いは降った雨が渓流にでてくるまでに通過する地中の深さが異なることに由来することがわかりました。つまり、同じような小さな流れでも、出てくるまでに通ってきた道のりが違っていたのです。

本研究ではこのような見えない地中の水の流れを水文トレーサ使って追跡しました。この技術は、たとえて言えば降った雨が通ると考えられるさまざまな道筋に異なる色の染料を置いておき、渓流に出てきた水の色から雨がどこを通って出てきたのかをつきとめる、というものです。本研究では水に溶けているシリカ濃度とナトリウムイオン濃度を用いました。これまでの研究により、表土層を流れてきた水に比べ、表土の下にある少し風化した岩盤中を通過してきた水でシリカやナトリウムイオン濃度が顕著に高くなることがわかっています。たくさんの小さい渓流でそれらの濃度を調べると、いずれも表土層からでてくる水と岩盤中から出てくる水の濃度の間の濃度を示し、この二つの道筋が寄与していること、渓流によって二つの経路の寄与の割合が違うことがわかりました。本研究ではまた、より大きな流域の大きな流れも小さい渓流と同様に、表土層と岩盤層を通ってきた水が混ざりあって形成されており、雨が降っていない時の渓流水のおよそ60%は岩盤を通ってきた水であることがわかりました<図1>。

 

図表


asano3-1.jpg
<図1>流域面積と岩盤を通ってきた水の割合の関係
●×+はそれぞれ平均、最大、最小の推定値をあらわす。

 

発表文献


Uchida, T. and Asano Y. (2010) Spatial variability in the flowpath of hillslope runoff and streamflow in a meso-scale catchment, Hydrological Processes 24, 2277–2286, DOI: 10.1002/hyp.7767.