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研究

異なる水質・水量の小さな流れが合流しあって平均的な流域が現れる

浅野 友子(森林流域管理学研究室/研究部 講師)
2010年10月25日

研究内容 

 水文学の重要な概念のひとつに代表基準面積概念(Representative Elementary Area Concept)があります。これは、流域面積が小さい渓流では、場所によって水文的な特徴が異なりますが、流域面積がある程度大きくなるとそれらの異なる小流域が合流しあうことにより流域間の違いが小さくなり、ある基準面積以上ではその地域の平均的な水文的特徴を示すようになる、という概念です。この概念は実務的にも重要で、例えば数値モデルを使って河川の洪水流出予測を行う際に、ある基準面積以上の流域は同じ応答をするものとしてとりあつかえる根拠となります。この概念は数値モデルを使った実験などでは確からしいことが確認されてきましたが、野外データで実証された例はほとんどありません。

 そこで、本研究ではこの概念が実際の現場でも適応できるのかを野外データを用いて確認しました。渓流水中に溶けているシリカ(Si)濃度はその流域固有の水文的特性をあらわす指標です。これまでの田上山地の雨が降っていないときの調査から、流域面積が小さい渓流では、渓流によってシリカ濃度が大きく違いますが、流域面積0.1~1.5 km2以上では渓流による違いがほとんどなくなることがわかってきました。このデータを用いて渓流が合流するにつれてシリカ濃度の渓流間の違いが小さくなるようすを調べ、一方で異なるシリカ濃度を持つ小さい渓流が流域内にランダムに分布し、それらが合流しあって濃度が収束していくと仮定した理論計算の結果と比べるとほぼ一致することがわかりました(図1)。つまり、現場のデータからも代表基準面積概念が適応できることが実証され、「代表基準面積」というものが実在することが示されたのです。

 

図表


asano2-1.jpg
<図1>流域面積とシリカ濃度の標準偏差の関係
点線は、異なるシリカ濃度を持つ小流域が流域内にランダムに分布し、単純に合流しあうときの理論的な流域面積と標準偏差の関係

 

発表文献


Asano, Y. and Uchida T. (2010) Is representative elementary area defined by a simple mixing of variable small streams in headwater catchments?, Hydrological Processes, 24, 666–671.