東京大学大学院農学生命科学研究科附属
科学の森教育研究センター
樹芸研究所 概要


目次

  1. 沿革
  2. 位置
  3. 地況
  4. 林況
  5. 研究教育
    1. ユーカリ属・アカシア属樹木の造林
    2. 熱帯林再生に関する研究
    3. その他の研究
    4. 教育実習
  6. 温室

1. 沿革

当研究所は,昭和18年(1943)に熱帯・亜熱帯産の特用樹木の研究施設として,静岡県賀茂郡南伊豆町青野の民有林約240haを購入して設立されました。その後,昭和23年(1943)に同町加納へ研究室・事務室を移し,青野に作業所を置きました。昭和30年(1955)に加納研究室の裏山約4ha,昭和38年(1963)に温泉の寄贈を受け,現在総面積246.1haの試験林と温室を利用して, 各種特用樹木の育成,熱帯林再生に関する研究等を行っています。

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2. 位置

伊豆半島南端の南伊豆町加納に研究室・事務室があり,景勝地である弓ヶ浜 へ6km,石廊崎へ13kmの位置にあります。交通は,伊豆急下田駅より約12km, 仲木・子浦行き東海バスで約25分,加納バス停で下車徒歩約3分です。青野作業所へは,加納研究室より8km,車で15分です。

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3. 地況

地質は新第三紀中新統の白浜層群からなり,基岩は石英安山岩,ひん岩が貫入岩類として認められます。土壌は,やや乾性の褐色森林土です。標高は青野作業所管内で約100〜500m,地形は複雑急峻です。気候は,青野作業所における最近30年間(1964〜1993)の平均気温が15.0℃,年降水量は2, 270mmで,0℃以下の日数は30.9日(初日12月19日,終日3月16日)となっています。気温極値は,最高33.6℃(1953年8月21日),最低-6.8℃(1970年1月18日)です。

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4. 林況

樹芸研究所の森林は暖温帯の照葉樹林帯に属し,元来シイ・カシの天然林が優占する地域です。その大きな部分を占めるシイ林は,かつて薪炭林として維持されてきた林がそのまま残ったもので,カシ類,シロダモ,ヤブ ツバキなどの常緑樹が混在する特徴的な照葉樹林です。一方,疎開した陽地には,コナラ,サクラ類,ハゼノキ,オオバヤシャブシ,ミズキなどの落葉性の樹種が多くみられます。林内にはタマアジサイ,アオキ,ヒサカキ等が多く,林床にはリョウメンシダ・ナチシダなどのシダ類,ツルコウジ・ヤブコウ ジ・ジュズネノキなどが生育します。現在,全体の約50%が人工林で内外の有用樹種が植栽されています。中でも約50haにおよぶ90年生のクスノキ人工林は他に類をみません。また,温暖多雨の気候と良好な土壌条件に支えられ,スギ・ヒノキの生育も極めて良好です。林齢は,クスノキ林を除くとほと んどが45年生以下です。

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5. 研究・教育

樹芸研究所では,内外の特用樹種に関する造林学的基礎研究を中心に,各種の試験研究を行ってきています。これまでに,油ろう・香料・薬料・タンニン等の原料生産のための樹種として,クスノキ・アブラギリ・ハゼノキ・各種のアカシア属・ユーカリ属樹木などについて,造林特性の評価を行ってきました。また,世界的に重要な課題となっている,熱帯林再生に関する研究にも積極的に取り組んでいます。

a. ユーカリ属・アカシア属樹木の造林

ユーカリ属樹木には,成長が非常に早く,各種有用成分を多量に含み,資源的に有望な樹種が多数認められています。また,近年では,世界的にパルプ生産用樹種として注目され,各地で造林が盛ん に行われています。一方,アカシア属樹木は,根粒菌との共生による窒素固定機能を持ち,瘠悪地における造林樹種として重要です。特に,近年では破壊された熱帯林再生のための決め手となる樹種として注目されています。こうした樹種のうち,利用価値が高く,資源生産上有望でありかつ我が国で栽培可能なものを選抜するため,現在,ユーカリ属67種,アカシア属35種について現地適応試験を実施しています。

b. 熱帯林再生に関する研究

熱帯産アカシア属樹木の組織培養による増殖やフタバガキ科樹木の導入育成,組織培養による増殖など,造林学・樹木生理学に関する基礎的研究を実施し,熱帯樹木研究を国内においてサポ ートする重要な位置を占めています。また,共同研究としてアカシアマンギウムの酸性土壌に対する耐性機構の解明に関する研究を実施しています。組織培養分野では,これまでにアカシア・マンギウムおよびアカシア・アウリカリフォルミスのクローン増殖に成功している他,フタバガキ科樹木の数種 についてクローン増殖に成功しています。また現在,約10種のフタバガキ科樹木を遺伝子資源として保有しており,各種の研究に供しています。

c.その他の研究

温室では,経常的な研究として熱帯・亜熱帯産特用樹木の導入・増殖が実施されています。一方,試験林においては,アブラギリ・クスノキ・コウヨウザン・メタセコイア等内外の導入樹種およびスギ・ヒノキ・マツについての人工林造成に関する研究が実施されています。また,樹芸研究所の立地的特長を生かした,広葉樹林に関する生態生理学的調査研究を実施し,暖温帯林の保全育成に寄与しています。

d.教育実習

樹芸研究所の主要な目的の一つに,熱帯林,熱帯・亜熱帯樹木,特用樹木,暖温帯林などに関する,教育実習があります。年間を通じて,各種の実習・研修等が行われており,一般の見学者も多数います。

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6.温室

樹芸研究所の温室は,昭和22年(1947)に木造で建設されましたが,昭和41年( 1966)に鉄骨に改造され,面積260m2,高さ7mです。熱源は研究室から320m離れた源泉(温度100℃,毎分200l湧出)から引湯して用いています。 現在,熱帯,亜熱帯の植物約350種を栽培・保存・展示し,研究や実習に利用しています。通年一般に開放しており,午前9時30分から午後4時30分まで,自由に見学することができます。また,2001年4月に2号温室が新設されました。主に,研究用に利用しています。外部の研究機関からの利用も受け入れます。

青野・温室植物リスト

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